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本間 裕
経済評論家、第一商品「経済・商品セミナー」レギュラー講師 [ 資産運用 ]
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QE3の可能性/老子の三宝
2011.08.10
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●QE3の可能性
現在、世界の金融界で、最も注目を浴びているのが、 「欧米の金融危機」であり、具体的には、 「アメリカのデフォルト(債務不履行)の可能性」や 「PIIGSの金融危機」である。
そして、この点に関して、「アメリカが、QE3を実施するのか?」が、 大きな議論になっているのだが、「大きな流れ」から考えると、 「QE3」というのは、「本質的な議論」ではなく、 「枝葉末節のこと」とも言えるようである。
つまり、今回の金融危機に関しては、 「1971年のニクソンショック以降、どれほどの金融資産が生み出され、 また、どのような方法で、その資金が手当てされたのか?」 ということが、最も重要な点だと考えるからである。
そして、基本的には、「世界的に膨れ上がった借金爆弾」や 「金融界の大量兵器と呼ばれるデリバティブ」に関して、 「抜本的な対策」が必要とされているのだが、 実際に起きていることは、「対症療法的な政策」である 「税金を増やしたり、国債の上限を引き上げたりすることにより、 より一層、借金の残高を増やす」という方策しか考えられていないのである。 そのために、現在の欧米では、「このままではいけない」という思いが、政治家の間でも強くなっており、結果として、 「上限引き上げ法案が、なかなか、決着が付かない」という 状況になっているのである。
より詳しく申し上げると、「QE1」や「QE2」というのは、 基本的に、「国債を大量に発行し、その国債を、中央銀行が主に買い付ける」 という政策だったようだが、かりに、 「国債の上限が引き上げられ、QE3が実施された」としても、 「根本的な構図」に変化がなく、 「金融危機に関しては、より一層の悪化が予想される」 という状況が考えられるのである。
そのために、これらのことに気付いた人々が、積極的に、 「金などの実物資産」を買っているのだが、残念ながら、 「日本人だけが、世界で、最も呑気な状態である」とも言えるようである。
つまり、「GDPと国債残高の関係」を考えると、 「日本が、最も、危機的な状態にある」ということだが、 不思議な事に、「マスコミ」や「経済学者」は、 ほとんど、この点を危惧せず、単に、「国民の資産があるから大丈夫だ」 というような意見に終始しているのである。 そして、このような呑気な認識が、 今回の「原発事故」を引き起こしたようだが、問題は、やはり、 「多くの人は、事件が起きてから、本当の問題に気付く」ということである。
しかし、「日本人の特性」としては、 「焼け野原に立たされた時に、本当の底力を発揮する」という点も指摘でき、 今後は、この点に期待するしか方法が残されていないものと考えている。
●老子の三宝
老子に次の言葉があるが、このことは、現代人にとって、 たいへん参考になるものと考えている。それは、 「私には、三つの宝物があり、一つは慈、二つ目が倹、 そして、三番目が、敢えて、天下の先頭にならないことだ」というものである。
つまり、「慈愛」を持つことにより、 「人々がお互いに助け合い、結果として、組織や社会が、効率よく機能する」 ということであり、また、 「自分が倹約することにより、他人に対して、いろいろな出費ができる」 というものである。 また、「三番目の、敢えて、天下の先頭に立たない」という点は、 「自分が表に立つことよりも、日陰で苦労している人たちに、 注意や関心を払う」ということだと考えている。
しかし、このような行いは、現代人が最も嫌うことであり、 多くの場合に、「そのような事をしていたら、自分が損をするだけではないか?」 という反論が聞かれることになるようだが、少しだけ、 歴史をさかのぼると、戦後に起きた「奇跡的な日本の繁栄」については、 この「三宝」が活かされたからとも考えられるのである。
つまり、「戦後の焼け野原に臨んだ日本人」が行ったことは、 「自分のことよりも他人を案じ、わずかな食糧や資源を倹約して使いながら、 運命共同体という言葉のとおりに、自分の出世よりも、会社や国家のことを考えた」 という状況だったのである。
そして、結果としては、「世界でも有数の資産を持つ国家」へと 変貌を遂げたのだが、残念ながら、現在では、本当の宝物である「老子の三宝」は、 完全に消え去った状態になったのである。
つまり、「自分さえよければ他人の事には無関心であり、また、 自分の贅沢を許しても、他人に対しては厳しい態度で臨み、 結局は、自分の地位や富だけを、真っ先に考える人」が増えてしまったからである。
このような結果として、現在の「金融混乱」が起き、また、 「人々の心」が歪んだために、「天変地異」が起きているものと考えているが、 今回の「3・11の大震災」については、 「本当の宝物とは、一体、どのようなものか?」を考える、 絶好の機会にもなったようである。
具体的には、数多くのボランティアの人々が、 「自分のことを忘れ、被災者の救助に当たり、しかも、 自費で被災地を訪れ、黙々と、目立たない裏側の仕事を行った」ということは、 まさに、「老子の三宝」を実践するような行為にも思えたのである。
そして、このことが、本当の意味での「日本の強さ」であり、 「史上最大の堕落をした日本人が、史上最大の覚醒を始めている状態」 だと考えているが、後は、「金融市場で、どのような事が起きているのか?」 についての覚醒だけが残されているようである。
2011年7月19日 本間裕(経済評論家、第一商品「経済・商品セミナー」レギュラー講師)
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