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本間 裕
経済評論家、第一商品「経済・商品セミナー」レギュラー講師 [ 資産運用 ]
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政官業の癒着/2008年と2011年
2011.09.02
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●政官業の癒着
「原発問題」については、現在、さまざまな事実が明らかになっており、 この時に、「どれほど、政官業の癒着が起きていたのか?」ということが、 全ての国民に理解され始めている。
そして、「国民の怒り」に関しても、暴発寸前の状態になっているようだが、 現時点で、必要な事は、 「福島原発問題を一刻も早く解決し、放射能汚染の問題を取り除く」 ということだと考えている。
しかし、現在の民主党にとっては、「一日でも長く、政権を維持する」ということしか、 頭にないようにも感じられるのである。
つまり、旧来の「癒着の構造」を維持し、問題の先送りを目論んでいるようにも見えるのだが、 このことが、東北地方の復旧に関して、進展が遅くなっている理由とも言えるようである。
別の言葉では、「国民のことを無視して、自分の地位だけを考えている」ということが、 「政治の混迷」を生み出している可能性があるのだが、この点については、 より大きな「政官業の癒着問題」が、今後、明らかになるものと考えている。
つまり、「原発問題」というのは、「実体経済に関する問題」なのだが、 今後、大きな注目を浴びそうなのが、「金融に関する問題」であり、 このことは、「預金や保険、あるいは、郵貯などの資金が、 どのように使われているのか?」ということである。
より詳しく申し上げると、 「国民の預金などが、今までに、どのように使われてきたのか?」ということであり、 「この実情が、広く国民に知れ渡った時に、どのような事が起きるのか?」ということである。
より詳しく申し上げると、現在の「世界的な金融混乱」が、 今後は、「金融システム」や「通貨問題」にまで発展し、 その時に起きることが、 「日本の財政問題は、本当に大丈夫なのか?」という議論だと思われるのである。
つまり、「アメリカは、この問題を真剣に議論しているが、 日本では、原発問題同様に、ほとんど無視されているのではないか?」 という疑問のことである。
このように、今回は、「1971年に操業を開始した福島原発」が問題を起こし、 次には、「1971年のニクソンショックから始まった、現在の金融システムと通貨制度」に、 問題が発覚するものと考えているが、 残念ながら、この点を理解する人は、まだ少ないようである。
そのために、「今後の混乱が、どれほどの規模になるのか?」を、 深く憂慮しているのだが、唯一の救いとなるのは、 「現在は、混乱の最終段階に入った可能性が高い」ということである。
(2011年8月7日)
●2008年と2011年
2011年の8月は、「8月5日の米国債格下げ」や「8月9日の株価急落」 に象徴されるように、大荒れの相場となっている。
そして、多くの人は、「2008年のリーマンショックのような状況となり、 再び、株価の暴落が起きるのではないか?」と考えているようだが、 「2008年」と「2011年」とを比べると、大きな違いが存在し、 実際には、「まったく逆の動きになる」ということが想定されるのである。
そして、この点については、海外のマスコミでも、理解が深まってきたようだが、 具体的には、「ウオール・ストリートジャーナル紙」にも、 次のような指摘がなされているのである。
つまり、「三つの違い」ということだが、 最初の違いは、「2008年」は、「民間企業や民間銀行の問題だった」 という状況だったのだが、今回は、「政府の信用が失墜している」ということである。
そして、二つ目の相違点は、「国民の意識」が述べられているのだが、 今回は、2008年とは違い、 「貯蓄率の上昇などにより、株価急落時の被害が小さい」ということである。
また、最後の点は、 「2008年の時に行われた政策が、今回は、機能しない」ということだが、 このことは、「金利の下げ」や「流動性の供給」などが、 「もはや、使えるような段階ではない」ということである。
しかし、現時点で起きていることは、「株価の急落」であり、 かつ、「金利の急低下」というように、 「表面上は、2008年の動きと酷似している状況」でもあるのだが、 このことが意味することは、 「間もなく、この相違点が、世界的に認識される」ということでもあるようだ。
つまり、「2008年の残像」が消えた時に、 「問題の本質」が明らかになり、その時には、 「国債を、誰が買っているのか?」、そして、 「これから、誰が、どのようにして、資金を供給するのか?」 という疑問点が出始めるということである。
そして、人々の理解が進んだ時には、 「大量の資金が、一斉に、貴金属などの商品に向かう」 という状況が想定されるのだが、このことが、現在、 「金価格が史上最高値を更新し、外資系証券会社が、 年内にも2500ドルに達するのではないか?」 とコメントした理由とも言えるようである。
つまり、今回は、「政府の金融政策が、完全に行き詰った」という状況であり、 あとは、「紙幣の増刷しか残されていない」という点が理解され始めているのだが、 このことが、本当の意味での「インフレ」であり、 海外では、「ジンバブエ・ワイマール型のハイパーインフレ」 という言葉が使われ始めているのである。
ただし、残念ながら、日本においては、まったく、理解が進んでおらず、 依然として、「2008年型の金融危機」を想定している人が、 数多く存在するようである。
2011年8月10日
【著者】 本間 裕(ほんま ゆたか) ・経済評論家 ・第一商品「経済・商品セミナー」レギュラー講師
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