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本間 裕
経済評論家、第一商品「経済・商品セミナー」レギュラー講師 [ 資産運用 ]
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無制限の資金供給/国債のツインタワー/ツイスト・オペレーション
2011.10.15
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●無制限の資金供給
今回の「ギリシャ危機」に関しては、 「大混乱の始まり」を意味しているようだが、それにしても、 「1年国債の金利が、短期間のうちに、140%台にまで急騰した」 という事実には、世界中の人々が、心の底から、驚かされたようである。
そして、先進国の政府は、慌てて、「年末にかけて、無制限の資金供給を行う」 という発表をしたのだが、このことは、反対に、 人々の不安感を増幅させる可能性もあるようだ。
つまり、現在では、人々の「金融システム」に関する理解が進んできたために、 「どのようにして、資金供給を行うのか?」という点において、 「大きな疑問」が出始めているからである。
具体的には、「先進国の中央銀行は、どのようにして、 その資金を手当てするのか?」ということであり、また、 「中央銀行は、どこまで、バランスシートを増やし続けることができるのか?」 ということである。
そして、このような混乱を見ることにより、多くの人が、 「通貨制度の歴史」を振り返ったり、あるいは、 「過去のハイパーインフレ」を研究したりしているようだが、 最も重要な点は、現在の通貨制度が、「1971年のニクソンショック」により 「金本位制から離脱した」ということである。
そして、その後は、「デリバティブ」を始めたとした、 さまざまな「金融商品」が、「空前絶後」とも言えるほどの規模で、 大膨張を始めたのだが、ほとんどの人は、このような事実に、 まったく気付かなかったのである。
つまり、「お金さえあれば、この世は安泰だ」というような考えに 世界中の人が染まり、結果として、 「地球環境の破壊」に繋がるような行動を取ったのだが、 結局は、「マネーの大膨張」が「金融混乱」に繋がり、 現在では、「自分の身に、火の粉が降りかかっている」 という状況になっているのである。
そのために、今後の展開を考える場合に、最も大切な事は、 「大膨張したマネーを、どのようにして、収縮させるのか?」 ということであり、 「増税では、決して、問題が解決できない」ということである。
つまり、現在の「増税すれば、国家財政問題は解決する」 というような議論については、「単なる時間稼ぎにすぎない」ものと思われ、 実際には、「先進国の金利が上昇を始めたら、あっという間に、資金難に陥る」 というような状況が考えられるのである。
つまり、過去の歴史を見る限りにおいては、「ハイパーインフレ」により 「借金を、一挙に、棒引きする」という方法しか残されていないようだが、 このことが、「目に見えない税金」である「インフレ税」のことである。
(2011年9月16日)
●国債のツインタワー
「ヨーロッパの金融混乱」は、日に日に、状況が悪化しているようだ。 そして、この混乱は、徐々に、その他の国々に移行しつつあるようだが、 この間に起きたことは、 「問題の本質が、人々の目に、はっきりと見え始めた」ということだと考えている。
つまり、時間の経過とともに、「政府が、どのような事を行っているのか?」 ということが、多くの人に理解され始めているのだが、具体的には、 「先進国の国債価格を守ることだけに専念している」ということである。
別の言葉では、「9月21日のFOMC」の後に、 「商品価格の暴落が起き、また、世界の株式市場も、急落局面に見舞われた」 という状況でありながら、「先進国の国債」に関しては、 「無傷」どころか、反対に、「史上最高値の水準」を保っているのである。
つまり、「国民が大きな被害を受けながらも、政府は、 まったく影響を受けなかった」という状況だったのだが、 この点に関しては、「人々の認識が深まるとともに、 大きな不満が高まっている状況」とも言えるようである。
つまり、「国債価格さえ暴落しなければ、世の中は安泰である」 というような考えが、先進国の政府に存在するようだが、 実際には、「PIIGS」と呼ばれる国々においては、 「金利の上昇とインフレにより、生活が、ますます苦しくなっている」 という状況が見て取れるのである。
別の言葉では、「国家の間においても、二極分化が進行している」 ということだが、この時に、はっきりと見えてきたのが、 「国債のツインタワー」とでも呼ぶべき「日米の国債残高」だったようである。
具体的には、「世界の国債残高」を絶対額でみた時に、 「日米の借金総額」は、「10000兆円前後」というように、 突出した形になっているのだが、一方で、 「歴史的に見ても、最も低い水準で、金利が保たれている」 という状況になっているのである。
そして、「なぜ、このような事が起きているのか?」という点に、 世界中の注目が集まり始めているようにも感じられるのだが、 今後の展開としては、 「外堀が埋まり、本丸にまで、問題が飛び火する」 という事態が想定されるようである。
つまり、「9・11事件」の時のように、 「国債のツインタワーが、一瞬にして、崩壊するような局面が訪れるのではないか?」 ということだが、過去の歴史を見る限りにおいては、 「どのようなバブルも、必ず、崩壊する」ということと同時に、 「今回は、史上最大級のバブルが形成された」という点も、 はっきりと見えてきたようである。
(2011年9月27日)
●ツイスト・オペレーション
9月21日の「FOMC(連邦公開市場委員会)」で発表されたことは、 「QE3]ではなく、「ツイスト・オペレーション」だった。 具体的には、 「長期国債を買い入れる代わりに、短期国債を売却する」 というものであり、このことは、 「FRBのバランスシートを膨張させずに、長期金利の上昇を防ぎたい」 という政府の思惑が反映されたものである。
つまり、今までのような、 「中央銀行が、大量の資金を投入し、国債を買い付ける」という方法から、 「バランスシートの中で調整を行い、全体の金額を抑える」 という意図によるものだが、この点については、 きわめて重要なメッセージが発信されたものと考えている。
つまり、「FRB」にとって、 「これ以上のバランスシート膨張は容認できない」、 あるいは、 「今までの方法では、実務的に、バランスシートが膨張できなくなった」 という点を認めたようなものだと考えている。
より詳しく申し上げると、 「今までの膨張については、電子マネーが主体であり、 紙幣の増刷は限定的なものだった」という状態だったのだが、 今後は、「電子マネーの膨張ではなく、紙幣の大増刷が実行される」 というメッセージだったものと思われるのである。
このように、今回の「ツイスト・オペ」の発表は、 「アメリカの中央銀行は、資金繰りに行き詰った」ということを、 素直に告白した可能性があるものと考えているのだが、 その後に起きたことは、きわめて無謀な行動でもあったようだ。
具体的には、「政策の効果」を強調するために、 「株式」や「商品」を売り叩き、ご丁寧に、 「商品取引の保証金率を上げる」ということまで行ったのである。
その結果として、「貴金属価格の暴落」や「世界的な株価の急落」 という事態に見舞われたのだが、一方で、「先進国の国債価格」は、 史上最高値の水準を保っているのである。
つまり、「国債価格の下落を防ぐために、株式や商品の価格を犠牲にした」 というような状況だったのだが、このことは、 「カダフィ大佐が、最後の段階で、傭兵を雇い、国民を虐殺した」 というような状況を想定させるようである。
しかし、その後に、リビアで起きたことは、 「国民の怒りを高め、結局は、地位を失った」ということだった。
そのために、今回の「ツイスト・オペ」に関しても、 「どのような結末が待っているのか?」が、 今後の大きな注目点になるのだが、歴史が教えることは、 「独裁者は、必ず、滅びる運命にある」ということであり、 また、「どのようなバブルも、独裁者と同じ運命にある」 ということである。
(2011年9月27日)
【著者】 本間 裕(ほんま ゆたか) ・経済評論家 ・第一商品「経済・商品セミナー」レギュラー講師
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