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本間 裕
経済評論家、第一商品「経済・商品セミナー」レギュラー講師 [ 資産運用 ]
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ティンバーゲンの定理/なぜ、今、TPPなのか?
2011.11.16
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●ティンバーゲンの定理
10月18日に行われた「バーナンキ議長の講演」には、 大きなメッセージが隠されていたようだ。
具体的には、「ティンバーゲンの定理」という言葉を使い、 「大胆な金融政策の変更」を示唆していたのだが、 この定理は、オランダのノーベル経済学者である 「ジャン・ティンバーゲン氏」が提唱した 「ある政策目標を同時に達成するためには、 その目標と同数の政策手段が必要だ」というものである。
そして、「何故、今回、このような言葉を使い始めたのか?が、 今後の大きな注目点だと考えているのだが、 この講演の中で、バーナンキ議長は、 「大きな金融混乱の前後では、当然のことながら、 金融政策に対する考えが変化する」と述べているのである。
つまり、「2008年のリーマンショック」を境にして、 「政府の対応が大きく変化した」という状況であり、また、 「今後も、より大きな変化が考えられる」ということを 強調したかったようである。
そのために、「今後、どのような政策変更が考えられるのか?」 という点に、大きな注意を払う必要性があるようだが、 基本的には、「金融システムの安定化」という点を強調しているのである。
つまり、現在では、「ヨーロッパの金融危機」が、 ますます激しさを増しており、今までのような、 「国債の買い支え」という方法では、「借金残高が増えるだけであり、 決して、根本的な解決策にならない」ということである。
そして、現在では、「抜本的な解決策」へ移行しようとしているようだが、 この点については、「最後の貸し手」という言葉を用いながら、 「中央銀行が、今後、どのような役割を果たすのか?」 という点を強調しているようである。
つまり、「金融システムの基本」から考えると、 「国家債務を返済する方法として、最後には、中央銀行が紙幣の増刷を行う」 という意味が隠されているようだが、この点については、 ヨーロッパの金利状態を見ることにより、 今後の進展が予想できるものと考えている。
具体的には、「イタリアの10年国債金利が、現在の6%前後から、 10%前後にまで急騰する」というような事態に見舞われた時に、 「金融危機が、日米にまで波及する」ということである。
そして、その時には、「大胆な金融政策の変更」が行われ、 「最後の貸し手」である中央銀行が、「大量の紙幣を増刷する」 というような状況が考えられるのだが、 「金融システムの安定化」という言葉の本当の意味は、 「すべての借金を棒引きにして、新たな通貨制度を創る」 ということも考えられるようだ。
(2011年10月25日)
●なぜ、今、TPPなのか?
現在、日本のマスコミでは、 「TPP(環太平洋経済連携協定)」の議論が、話題の中心となっている。 そして、賛成派と反対派とで、日本を二分するような状況にもなっているのだが、 不思議な点は、「海外では、ほとんど、この問題が議論されていない」 ということである。
つまり、海外の関心事は、「ヨーロッパの金融危機」であり、 具体的には、「ギリシャの次に、イタリアが混乱に陥るのではないか?」 という点や、あるいは、「ヨーロッパのみならず、日米にまで、 この混乱が伝播するのではないか?」ということである。
そして、このことが意味することは、 「実体経済の一部分にすぎない、世界の貿易や関税」のことよりも、 「実体経済の何十倍にも膨らんだマネー経済」に、 大きな問題が発生しているということである。
別の言葉では、現時点で、最も重要な課題は、 「いかにして、現在の金融危機を乗り切るのか?」ということであり、 「貿易の関税問題」については、 「平時における、二国間、あるいは、多国間の協議にすぎない」 と考えられているのである。
つまり、「戦争が起きているような状況下で、対戦国から、 塩をいくらで買うのか?」を議論しているようなものであり、 世界的な動きからは、大きなズレが存在するようにも感じられるのである。
そのために、「なぜ、このような事が起きているのか?」を考えてみると、 結局は、「国民の目を、違った方向に向けるためではないか?」 とも言えるようであり、具体的には、 「国民の不満が爆発しないように、訳の分からない議論に、 時間を費やしている」とも考えられるのである。
あるいは、「アメリカで高まり始めた国民のデモ騒動が、 日本にまで飛び火することを恐れたのではないか?」 ということも考えられるのだが、その理由としては、 「年金支給開始年齢の引き上げ」や「消費税の増税」などの方が、 国民にとっては、より大きな関心事とも思えるからである。
このように、現在の世界情勢を考えると、すでに、 「ユーロの崩壊」や「世界的な金融システムの破綻」について、 いろいろな識者が警告を発している状況であり、 「時間的な余裕は、ほとんど無くなっている」という状況とも言えるのである。
そして、後は、「何時、借金爆弾が、世界的に破裂するのか?」 を、固唾をのんで見守っている段階だと考えているのだが、 現在のような「不毛な議論」が活発に行われている日本というのは、 よほど、呑気な国なのか、それとも、多くの国民が 「水湯での蛙の状態」になっているのかが、 たいへん気にかかる状況とも言えるようである。
(2011年10月27日)
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