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本間 裕
経済評論家、第一商品「経済・商品セミナー」レギュラー講師 [ 資産運用 ]
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信用崩壊の波/最後の貸し手
2011.12.19
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●信用崩壊の波
最近、「炎上するヨーロッパ」という言葉が、 盛んに聞かれるようになってきたが、 実際に、現在の金融混乱は、加速度的な勢いを見せてきている。
そして、今回、決定的な大事件となったのが、「ドイツ国債の札割れ」であり、 このことは、「10年国債の入札」に関して、現在の金利では、 「65%程度の応札額しか存在しなかった」ということである。
つまり、最も安全な投資先の一つだと思われていた「ドイツ国債」に対して、 「市場からの拒否反応が出た」ということだが、このことは、現在、 進行中の「金利上昇の波」が、ドイツにまで及んだということを意味しているのである。
そして、この時に、はっきりと見えてきたのが、 「二つのツインタワー」だと考えているが、それは、 「日米の国債ツインタワー」であり、また、 「英米のデリバティブに関するツインタワー」のことである。
つまり、「史上最高値圏に位置し、かつ、安全な資産」と思われているのが、 「日米の国債」であり、また、その裏側で、国債価格を支えているのが 「デリバティブの存在」ということである。
より具体的には、「1000兆円前後の残高となっている日米の国債」と、 「約2京5000兆円前後の残高といわれる英米のデリバティブ」だけが、 最近まで、ほぼ無傷の状態であり、金融混乱の波から逃れられていたのである。
そして、この理由としては、 「デリバティブに関しては、恣意的な価格での決算が認められた」というように、 一種の「飛ばし」のような状態となっているからである。
また、「日米の国債」についても、 「国家同士の持ち合い」というような状況となっているために、 実際には、「自国の国債を買うだけではなく、各国が相互に買い支えあった」 というような、奇妙なバランスの上に、 現在の国債価格が史上最高値圏を維持しているのである。
しかし、今回、「IMF」が警告を発したように、「日本の国債」については、 極めて危機的な状況にあり、実際には、 「いつ、暴落が起きても不思議ではない段階」に差し掛かっているようだ。
そして、この点については、「9・11事件」が思い出されるのだが、 それは、「アメリカの貿易センタービルにジェット機が激突し、 その後、ツインタワーが劇的な崩壊をした」という出来事のことである。
つまり、今回は、「目に見えない、二つのツインタワー」が存在し、 「激突したジェット機の役割を果たすのが、ギリシャやイタリアではないか?」 と考えているのだが、今後の展開としては、 「ツインタワーの崩壊後に、インフレの大津波が世界を襲う」ということであり、 このことは、すでに、世界的な始まりを見せているようである。
(2011年11月25日)
●最後の貸し手
海外では、「今回の金融危機に関して、誰が、最後の貸し手になるのか?」 という議論が盛んになっている。
つまり、「民間の企業や金融機関は、国家が救った」という状況だったのだが、 このことが意味することは、「不良債権が国家に移行した」ということであり、 かつ、「国家や中央銀行のバランスシートを大膨張させることにより、 時間稼ぎを行った」ということだったのである。
別の言葉では、「国債価格を高値にまで買い上げる」という綱渡り的な行為により、 かろうじて、問題の発覚を遅らせることができていたのだが、 現在の「世界的な金利上昇」については、「これらのすべてが、行き詰った」 ということを意味しているのである。
そして、後は、「大量に買い付けた国債」に関して、 「大きな損失」が生まれることが予想されるのだが、このことが意味することは、 「多くの民間金融機関だけでなく、国家や中央銀行にも、資金繰りの問題が生じる」 ということである。
あるいは、今までとは違い、「資金調達の時に、高い金利を払わざるを得なくなる」 ということでもあるが、「債券」の性質としては、 「一旦、このような事態が発生すると、その後の金利上昇は、 極めて急激なものになる」という点が指摘できるのである。
具体的には、「ギリシャの1年国債」のように、 「2年ほど前は1%台の金利だったものが、現在では、300%を超えている」 というような状況が、今後、他国にも広がることが考えられるのである。
あるいは、「1991年のソ連崩壊時」のように、「長期国債のみならず、 短期国債の発行もできなくなる」というような事態も想定されるのだが、 問題は、「この時に、どのような事が起きるのか?」ということである。
つまり、「金融システム」から言えることは、 「誰が、究極的な資金供給を行うのか?」ということであり、 この「答え」としては、「マネタイゼーション」という 「中央銀行による紙幣の増刷」しか考えられないのである。
そして、現在では、急速に、この点に対する「認識」や 「恐怖心」が高まっているのだが、実際の状況としては、 すべての金融政策が、完全に「限界点」に到達し、 これからは、「極めて短期間のうちに、大きな変化が起きる」ものと考えている。
つまり、「劇場の火事」のように、世界中の人々が、 慌てて、「安全な資産」へ殺到するということだが、 このことが、いわゆる「換物運動」ということであり、 かつての中南米や東欧で起きたように、 「紙幣を受け取ると、すぐに、市場で実物資産へ交換する」 という動きのことである。
(2011年11月26日)
本間裕(経済評論家、第一商品「経済・商品セミナー」レギュラー講師)
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