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高城幸司
人事・キャリアコンサルタント/きき酒師 [ 営業 ]
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人事のリスクを知らない経営者が多すぎる
2010.05.15
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私はこの10年間で仕事を通じて5000社近いベンチャー企業の経営者とお目にかかるチャンスがありました。起業を応援する雑誌アントレの責任者(事業部長)として取材や営業が目的でしたが、その2〜3%の割合でIPOを実現されていきました。つまり100名に会えば2〜3人が株式公開をした訳です。株式公開自体がすべての成功とは思いませんが、上場を目指した急成長企業の戦略を数多く見ることは経営者の優先順位をつけた効率的な手法を学ぶいい機会になりました。
ただその当時から効率経営の実践で気になっていたことが1つありました。それは急成長する企業こそ大切なはずの人材マネジメントについて打ち手が何もなされていないことです。財務・管理面はCFOと呼ばれる専門家を雇用しているケースが大半で会計からコンプライアンス面での整備も体系立てて実効されているのですが、何故か人事の専門家を社内外に確保していません。昨年に株式公開を果たした経営者に20名以上インタビューさせていただきましたが、すべての企業が人事部長はCFOの兼任体制でした。つまり人事の経営戦略は
<財務・管理のついでに何か問題が起きれば考える>
程度の軽い問題意識なのです。果たしてこれで大丈夫なのでしょうか?
社員が100名を超える予定ならば人事マネジメントに計画性を持つべし
人事マネジメントとは
■人材を確保する仕事(採用に関する業務) ■人材を活かす仕事(育成・評価・配置に関する業務)
の大きく二つの仕事を意味しますが、従業員が20-30名程度で大幅な人員の増員予定がなければ、人事マネジメントは社長が目の行き届く工夫で大半のことは解決できます。ところが、100名を超える企業になると経営陣と社員の間に<管理職>と呼ばれる役割がしっかり機能しないと組織はまわらなくなります。そこで100名体制を超える前に管理職を育てて、マネジメントするルールを準備することになります。ルールとは?給与や昇給・昇進などを決める人事評価制度のことです。こうしたルール無きままに100名を超えて成長を続けるとどうなるのでしょうか?何も手を打たないと徐々に企業にダメージを与えるリスクを生み出すことになります。
人材が流出・不満が外部に漏れて大変なことに
私は社員を増やして成長する時期に人的問題が起きて破綻した企業を幾つも見てきました。創業期は社長の頑張りで社員も職場の雰囲気もよく、破綻するなんて信じられなかったのです。ところが、事情を聞くと納得できる問題が起きていました。それは中間のマネジメント層が不在のための組織崩壊だったのです。
残念ながら、どんなに優秀な社長でも社員が100名を超える組織になると、社員に関われる時間が物理的に割けなくなります。ここに1つにターニングポイントがあります。
(これまで〜すべての権限は社長の1top)
(これから〜細かい権限は管理職に委譲)
する体制に代わります。すると社長との直接の接点が下がることに不安・不満を覚える社員が出てきます。
「社長の魅力に惹かれて入社したのに直接話す機会なんてないなら…辞めます」
いきなりはないでしょうが、社長の変わりに権限が委譲された上司のマネジメントで社員のモチベーションに変化が生まれる可能性は高いのです。
社員は仕事の相談や
■会社の戦略 ■自分の職場評価
を上司をフィルターに知ることになります。果たして管理職は社長の期待通りの仕事をすることができるでしょうか?残念ながら…急成長の企業で部下のマネジメントを軽く考えて、現場の業績の高い社員を抜擢して<任せて>育てる傾向があります。ここに大きな罠があるのです。
育成しない管理職のマネジメントが企業にリスクをもたらす
経験もなく教育も受けていない人材がマネジメントをすることは、とても危険をはらんでいます。社長に代わって部下をマネジメントする管理職の人的魅力や業績管理能力も大切ですが、それよりも
■部下をやる気にさせる能力開発が出来るか? ■平等な評価をするための目利きが出来るか? ■法的知識ないままに過重労働など誤った指導をしていないか?
などの部分は最低限の知識の担保がないと会社に不利益をもたらすリスクが高まります。具体的なリスクに関しては次回以降に書かせていただきますが、会社にダメージを与えないためにも最低限のルールと育成プランを人事マネジメントでも準備する必要があるのです。
こうした人事マネジメントを怠ることが会社にもたらすリスクはj-sox法の実践で高まることはあっても、下がることは無いと予見されます。会社に人事部長が不在であれば、社長や経営陣が知識を蓄えるか?外部の専門家を確保することをお勧めしますし、そもそもその前にリスクについて理解いただくとことが第一歩になることでしょう。
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