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石田淳
行動科学マネジメント研究所所長 [ 経営 ]
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第4回 結果と直結している行動を正しく測定する
2007.04.13
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■ステップ2「メジャーメント」
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前回のやり方でピンポイントの行動を把握したら、次はその行動をメジャーメント(測定)するのがステップ2だ。部下がピンポイントの行動をどれだけ行っているか、文字通りカウントするのである。 測定するためには、出来る限り数値化することが好ましいが、行動は数値化できるものばかりではなく、中にはどうしても数値化できないものもある。例えば「顧客満足」・「高い品質」・「サービス基準」を保つ行動などである。そのような数値測定不可能なものを判断するには「ISクオリティー評価法」を利用する。具体的には、「とても良い」「良い」「少し良い」「悪い」「少し悪い」「とても悪い」というように偶数段階の基準を設定し、真ん中の基準をわざとつけないようにして評価をとる方法である。このように予め決めた基準で測定することで、感覚的な判断を避けることができる。 行動科学マネジメントの効果を確認するには、測定が必要不可欠である。客観的に測定することによって、その方法が正しかったのかどうか判断することが可能になり、また改善点も見えてくる。印象や直感で判断するのは、客観性に欠ける。測定によってデータを積み上げない限り、正確に見きわめることはできない。 部下たちのパフォーマンスを把握するには、継続的なデータ収集が欠かせない。客観的な測定データを持っていることで、管理職間に実利のある対話をもたらす。会議においても、客観的なデータをもとにパフォーマンスに焦点を置いた話し合いが可能になる。いわば、問題解決のための共通言語を持つことになるのだ。 測定には「質」「量」「時間」「コスト」という4つの要素がある。あらゆるパフォーマンスは、この4つのカテゴリから測定されなければならない。 @質の測定 パフォーマンスを測定するとき、よく陥りがちなのが間違いをカウントすることだ。しかし、間違いを探すより、どれだけ正確に行動しているかを見ることのほうが重要だ。正確さが増すほど、パフォーマンスにおける間違いは減っていく。行動科学マネジメントの測定とは、行動の正確性を計測するものなのである。 A量の測定 量は測定において最もよく使われる指標で、数量、割合、頻度などで示される。だが、量の測定だけを利用するマネジメントはうまくいかないことが多い。成果主義の失敗の原因の一つはここにある。たとえば「いくつ売れたらボーナス」「いくつ以下ならペナルティ」というルールを作ると、好成績をあげた人間はモチベーションが高まるが、成績をあげられない人間はやる気を失ってしまう。最悪の場合、不正を行って成績を水増しするような行為も出てくるだろう。質に目を向けず、ひたすら量だけを強化すると、このようなトラブルを招きかねない。 B時間の測定 端的に言えば、納期を守れるかどうかということである。あらゆる仕事において納期管理は大切である。納期短縮も重要な課題だ。一定の時間内に仕事をやり遂げるということは、ビジネスの基本なのである。ただし、あまり時間的効率を追い求めてしまうと、納期に間に合わせることを優先して、仕事に手抜きをしてしまうことがあるからだ。納期ばかりを追い求めると、顧客満足がないがしろになりかねない。 Cコストの測定 行動科学マネジメントで問題にするのは、パフォーマンスにかかるコストである。製造コストとパフォーマンスにかかるコストは明確に区別することが必要だ。パフォーマンスにかかるコストは、望む結果を出すための行動の支援にかかる費用であるが、企業の業績が悪くなると真っ先に削減されやすいコストでもある。しかし、これまで述べてきたように、ビジネスは人の行動の集積であり、行動を促すためのコストは削られるべきではない。 測定するうえで気を付けなければならないのは、設定した目標をどこまで達成できたかによって評価しなければならないということである。たとえば、目標到達度合いに順位をつけると、社員の競争心を煽ることになるし、一人だけ勝者を作ることにもなってしまう。行動科学マネジメントにおける測定は、あくまでもピンポイントの行動をどれだけ行うことができたかを計測し、それをマネジメントに活かすことが目的であり、勝者と敗者を作るものではないということを心しておきたい。
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