私は、フードビジネスプロデューサーをしています。これから「食シーン」を活用してビジネスを成功させる方法について連載をしていきたいと思っています。
初めに「飲食接待」についてですが、実は私は、この「飲食接待」という言葉があまり好きではありません。とかく「飲食接待」という言葉は食事の価格や場所へのこだわりを感じるからです。こういうことよりも相手を大事にする気持ち、つまり「もてなす」という感性がまず大切だと思うからです。そういう感性があれば、たとえラーメン1杯でも自分の身丈にあった心のこもったもてなしに相手は喜んでくれると思います。私は常に相手を喜ばせることが頭にあり、そういう感覚でビジネスをしています。ですが、よりいっそう深い縁をつくるための会食はすごくいいチャンスだと思います。それは、相手の素が見えたり、仕事場で話せなかったことが話せるようになったりと相手とより深い関係を築くことができるからです。食事は、楽しい武器になります。1日3回の食事をうまくビジネスに活用しましょう。
おもてなしの原点くち茶道にあり ホスピタリティーという言葉が最近注目されています。この「人を感動させる」というホスピタリティー精神の原点を知るためには、まず日本を知ることが重要です。
私は、日本文化において接客の原点は茶道にあると思っています。茶道というのは、招待された側にとっては、ちょっと特別なシーンとして、着物を着たり、朝から髪を結ったりとあれこれ考える楽しみを味わえます。
そして、招かれたお屋敷は、秋であれば紅葉が色づいていたり、春なら桜が舞っていたり、「きれい」と思いながら期待感が増していきます。門に近づいていくと掃き掃除がされ、水が打たれ着物の裾(すそ)が汚れないようにという心配りを感じることができます。
さらに、家の中に入っていくと、襖(ふすま)絵(え)が描いてあったり、植木の手入れがされていたり、池には鯉が泳いでいたり……そんなシーンを眺めながらお茶室の小さいくぐり戸を抜けると、茶器や座布団が用意されています。自分のために用意された茶器でお茶をたてていただくその技術、それに合った茶菓子を楽しみながら、お茶をいただきます。
ただお茶を飲ませるだけなら、入れておいて飲ませてくれればいいのですが、そうではなく、その1杯をもてなすために鍛錬してきたことをお見せすることが大切なのです。
またお茶会が終わってから「いい時間だった、いいお茶をいただいた」と思いながら、次回を楽しみに過ごしていただくという一連の作業が、おもてなしの作業なのです。ホスピタリティーを考えるうえで一度は、日本の文化に触れてみてはいかがでしょうか。
※本連載は『月刊フナイメディア』の連載を転載しております。
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