「どうにかして高額な設備を外すことができないか。車じゃなくて、人を検知すればいいのではないか。たどり着いたのがビーコンです」
ウェブシステムの開発などを手掛ける名古屋のIT企業、シード社長、吉川幸孝氏は長年の思いをこう語った。実家が駐車場を経営している吉川社長は、長年、新しい駐車場のカタチを探し続けていた。
シードは新たな事業のスタートを2016年2月29日の会見で発表した。シードが開発したのは、電波を発する特殊な機器「ビーコン」を備えた三角コーンとスマートフォンのたった2つの“道具”で、単なる土地がコインパーキングに早変わりするシステムだ。通常、コインパーキングでは車が出入庫したことを感知するロック版や遮断機が必要だ。精算機も設置しなければならない。それらが一切必要ないというのだ。このシステムを吉川社長は「Smart Parking(スマートパーキング)」と名付けた。3月1日から運用スタートとなる。
Smart Parkingが「駐車場シェアリングサービス」をより便利に Smart Parkingとは、いったいどのようなシステムなのだろうか。
「Smart Parkingは空きスペースを保有するオーナーと、駐車場を使いたいユーザーとを、リアルタイムな駐車状況管理を実現することにより、よりスマートに繋ぐサービス」と吉川社長は説明する。
契約者のいない月極め駐車場や使っていない自宅の駐車場などの空いているスペースと、その周辺で駐車場を探すドライバーをマッチングさせるサービスを「駐車場シェアリングサービス」という。
実は、駐車場シェアリングサービスの需要は年々、高まってきている。国土交通省の調べでは、自動車保有台数は8000万台に到達しているのに、月極め駐車場や自宅の車庫などを除いた駐車場台数はたったの500万台しかない。数字だけから判断しても出掛けた先で車を停めるのに苦労するのは、当たり前と思った方がいいのかもしれない。特に愛知県は自動車保有台数が日本一だ。土日ともなると、名古屋市内の栄や名駅といった都心部では、駐車場待ちのために並ぶ車の列が道路の1車線を埋めるほどにもなる。駐車スペースの確保は重要課題だ。
空いているスペースを必要としている人のために有効活用する。まだ、あまり認知されていないが、駐車場シェアリングサービスはこのような考え方に基づいている。このサービスには、すでに国内で5社が参入している。ネットで駐車場シェアリングサービスをしている駐車スペースを探し、1日単位で予約をするというものだ。
出入庫はスマホをかざして管理
スマートフォンをビーコーンにかざす
「既存の駐車場シェアリングサービスは、どれも1日単位でしか駐車場を貸し出しできません。それは、駐車状況のリアルタイムな管理ができないためです。Smart Parkingはこれらの課題を解決するサービスです」
吉川社長は、Smart Parkingなら1日単位ではなく、コインパーキングのように分単位で管理することが可能だと説明する。その核となるのが前述の、三角コーンに搭載された「ビーコン」だ。Smart Parkingのアプリをあらかじめダウンロードしてあるスマートフォンがビーコンからの電波をキャッチすることで、出入庫管理をしようというわけだ。車を駐車したら、スマートフォンを三角コーンにかざす。これだけで「入庫」と判断することができるのだ。
ナビ機能や決済機能も
Smart Parkingには他にも便利な機能がある。アプリで空いている駐車場を探し予約すると、その駐車場までアプリのナビ機能が案内してくれるというとても親切なサービスが付いている。課金される金額もリアルタイムで知ることができる。そして、料金の支払いはクレジットカードから。といっても、お財布からカードを出す必要はない。クレジットカード情報をアプリに登録しておくと、出庫した時点で料金が計算され精算される。小銭を求めて自動販売機やコンビニエンスストアに飲み物を買いに走る必要ももうないわけだ。