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前田和彦
有限会社アーノスグローブ代表 [ 資産運用 ]
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前田和彦
[インタビュー]
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借金国家から資産を守る方法 −資産防衛のプロだけが知っている!/フォレスト出版(2)
2005.11.06
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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資産の運用は必ずリスクがあり、 掘り出しものはありません。
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リスクを考えることを身につけよう
【高城】 よくアジアに行くと、その国の通貨よりもドルの方が流通していることが結構多いんですね。本の中でアルゼンチンが1つのケースに取りあげていましたが、アルゼンチンは昔は豊かな国だったのに(貨幣価値が)暴落したという話がありました。できることなら日本もそうなって欲しくないなと思ったんですけれど、一方でこの本には国家論ではなくて、まず自分の身近にあるお金をどう守るかという話が書いてあります。
具体的な内容については読んで頂いた方がいいと思うんですけれど、1つだけお聞きしたいことがあるんですけれど、「私なら勧めません」とか、「私はこういう経験をしている」など、前田さんご自身の実体験がたくさんこの本の中に入っていますし、推奨するべきこともきっちり書いてあると思うんです。ここまでの内容を盛り込んだ本を今回書こうと思ったきっかけを教えていただけますか?
【前田】 私は実際にプライベートバンキング・サービスを特定の顧客向けにサービスを提供していますが、自分一人でやれる範囲というのは非常に限られています。UBS時代もお客さんの数が30人までという限定があって、要は、100人、200人に対してサービスを提供できるかというと、それはもう不可能なんですよね。
その一方で、誰か同じようなアイデアでやってくれる人がいたら一緒にできるんですけれど、これで生活ができるかというと非常に厳しいものがあるので、本を書く形にして、皆さんにちょっと目を覚まして下さいという趣旨でこの本を書いたということですね。
【高城】 この本を書いたことによって、8万人の方が前田さんの本を読んでいますよね。日本がまずいかもしれないということで、中にはいきなりドルに変えた方もいたかもしれないと思うんですけれども、読者の方から何か反響はありましたか?
【前田】 そうですね。皆さん、初めて銀行や証券会社が勧めるものが、必ずしも自分を守るためのものではないと気づいたようです。銀行は商売でやっているんだということに初めて気付かれた方もいらっしゃったと思います。
【高城】 やはりもう1つ、お聞きしたくなったんですけれども、前田さんはロンドンにいらっしゃいましたよね。海外の経験が長かったことが今回の本を書くきっかけになったということはありますか?
【前田】 海外の場合はやはりみんなもっと真剣に物事を考えているということと、掘り出し物というのは、海外にはないんですね。物の値段と、必ず物の品質は合っているんですよ。
【高城】 掘り出し物はない。
【前田】 例えば、不動産や投資商品も、「これはあなただけの商品ですよ」というのものが、日本では横行していますよね。
【高城】 ありますね。
【前田】 そういうものは本来、ないんですよね。例えば不動産だと、そのものを見れば価値がわかりますが、金融商品になると皆さん、掘り出し物が何かあるんじゃないかとどうしても思ってしまって。
例えばリスクもないのに今のご時世で(利回りが)10%ですよとか、5%ですよとかいう話に軽々乗ってしまうんですよね。ところが海外の場合は、金利が4%の金利の時に「10%の実績が出ますよ」と言われたら、当然リスクがないのが4%だとすれば、(残りの)6%にはどういうリスクがあるのかと、非常に真剣に色々な手を使って調べるんですよ。
その上で、そのリスクを取れるかどうかを判断して初めて投資するんです。日本の場合はどうしても、「4%の金利で10%の実績が出ます。これ、あなただけですから」と言われると、リスクを考えないで投資してしまうというところがあるんですよね。
私は、ロンドンに6年ぐらい居たんですけれども、その間に色々な国を回って、色々な所で色々な会社の方に会って話した中で、やはり彼らは非常にその辺をシビアに見ているというところがやはり日本と一番違うところだと思いましたね。
リスクを様々な手法を用いて分析する 【高城】 日本には正確な情報がないわけではなく、日本人にリスクを判断する力がないから、リスクのある商品を買ってしまうのでしょうか?
【前田】 そうですね、私が経験したことをお話すると、ロンドンにいたときにポーランドに出張したことがありました。ロンドンでも日本の新聞を取っていたのですが、その中に、ポーランドの写真が出ていたんですね。
それが暗いわけですよ。みんな暗い顔をして、暗い服を着ているわけです。それはワルシャワだったんですけれども、「こんな国、行くのやだな」と思いながら、ワルシャワ空港で降りて街中に行ったら、能天気に明るいわけですよ。世界の一流品がダーっと並んでいるし、みんな生き生きとしているし。「日本の新聞の言っていることと全然違う、おかしい」ということで、当時、商社の社長さんに「日本の新聞で見ると、ポーランドは非常に暗い国に見えるけれど、全然違うじゃないか」と聞いたら、「いや前田さん、ポーランドというのは、東欧のラテンと言われている」と。ポーランド人は、みんな明るいわけですね。「なんでそういう写真になるんですか?」と聞いたら、その社長がおっしゃっていたのは、取材に来られた方が、ポーランドを見て、明るいと思ったので、明るい写真をパッと撮って、本社に「ポーランドは明るい」と送ったら、本社から「それはポーランドのイメージに合わないからだからダメだ」と。それで結局、葬式の写真を撮って送ったということなんですね。
そういう意味では、別に日本のマスコミ、新聞を非難するわけではないんですけれども、日本人って結構新聞とか、あるいは金融機関もそうですが、言われたことに対してもう全く疑いなく受け入れる可能性が高いんですね。
そうではなくて、実際に行ってみて、色々な所を見れば、結構報道と違うんですよ。この違いを皆さんは知らないといけないということですよね。だから日本人は新聞でも、海外の新聞を読めば、全然話は違いますよ。
【高城】 本を読ませて頂いて思ったんですけれど、正しい情報をきちんと入手することと同時に、それを冷静に判断する。
どうしても資産とかお金の話というのは、ついついうまい話を聞くと、その場で乗ってしまいたくなるということがあるんでしょうけれども、いくつかの情報をきちんと取ることと、最後にリスクを取って判断することが大事なのかなということをこの本を読んで、改めてすごく感じました。
【前田】 リスクという言葉を言うと「リスクは下がる」と、皆さんは考えるんですけれども、リスクというのは変動幅のことなので、上がることだってあるんですね。だから投資をしようとする時に、全くリスクがないという投資の仕方もありますけれども、リスクというのは下がることと上がることの両方あるんだと。
その中で自分の生活とか、あるいは目的を持って、どの程度のお金だったらリスクを取っていいのかを考える必要があるんです。要はリスクというのは、もうAll or nothingの可能性もあるわけで、こういうことを考えてきちんと投資をすれがいいと思うんですね。
それをなけなしに、リスクがあるにもかかわらず、リスクを分析しないで、ありったけのお金を10%儲かるからと言って、投資してしまう。その感覚がちょっとおかしいということですね。
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