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主藤孝司
起業家大学 [ 時間管理 ][ 起業 ]
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主藤孝司
[インタビュー]
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起業家プロの発想力/成美堂出版(1)
2006.04.09
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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起業家プロの個性や経験は十人十色。 成功への道も十人十色。
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ありがちな成功本ではつまらない
【主藤】 『15分間ビジネスセミナー あのベストセラー著者に聴く』は、昨年の2月から放送を始めて、すでに一年以上が経ちました。いままでにお越しいただいたゲストの方は、50人以上になります。
【川崎】 そんなに沢山の方に来ていただいたのですね。毎回とても勉強になりました。そこで今回は、初心に帰ってといいますか、趣向を変えて、いつもはお話の聞き手をされている主藤孝司さんにお話を伺いたいと思います。
主藤さんは、成美堂出版から出版されております、3万部を突破したベストセラー、「起業家プロの発想力」の著者でいらっしゃいます。主藤さん、今日はどうぞよろしくお願いします。
【主藤】 宜しくお願いします。
【川崎】 主藤さん、ちょっとびっくりしました。いつも一緒に話をしてくださっている主藤さんが、実はこんなに沢山の経歴をお持ちだったのですね。
今日は、その中でも「起業家プロの発想力」という本にフォーカスしてお話を伺いたいと思います。まず、これはどんな本なのでしょうか?
【主藤】 そうですね。色々な企業を経営されている社長さんの考え方やうまくいったきっかけなどを書いた本です。
【川崎】 プロローグでちょっと気になったところがあります。始めにこの本の監修をされることを出版社の方にお断りになっていらっしゃいますね。けれど、結局は監修されることになって。これにはどのような心の変化があったのでしょうか。
【主藤】 詳しくは、「プロローグ」のところに書いているので読んでいただければと思うのですが、実はこの手の本は結構ありがちなのですね。ありがちということで顕著なのは、おととし、当時ライブドア社長だった堀江さんが、近鉄の買収に名乗りをあげた頃ですね。その頃からいわゆるヒルズ族の方々についての本や雑誌の特集がいろいろと出たわけです。
それらは、言ってみれば平べったい内容で、本を読んでも芸能ネタ的なものしか得られない。出版社としては、芸能の世界でもプロスポーツの世界でも何か話題のものがあれば、それにまつわる本をタイミングよく出したいと思う。それはビジネス的には、非常に正論なのです。
けれども、急いでしまうためにどうしても内容が薄い本になってしまう。この本も出版社から私に監修依頼があったのは半年以上前のお話ですから、ヒルズ族の成功本に近い趣旨はあった訳ですね。そういった意味で、「寄せ集めですよね」と指摘しました。要は、本を読んで何が学びになるのかが、最初に原稿をいただいた段階ではちょっと見えなかった。それで「申し訳ないのですが、このままの内容では僕のポリシーと反するので・・・」とお断りしたわけです。
本を出すことは、もちろん楽しみでもありますが、一方でビジネス書であれば、何が学べるかを重視したいと僕は常々思っています。企画から関わっていればよかったのですが、これは全く関わっておらず、できあがった原稿を渡されて「監修お願いします」といわれたので、「それはちょっと・・・」というやりとりがあったわけです。
【川崎】 わかりました。この本の中には、70名の起業家や経営者の方々の体験がまとめられていますね。
パッと見ただけでもTSUTAYA、カルチャーコンビニエンスクラブ、高野友梨ビューティークリニック、和民、有線、ケーズデンキなど私達の知っている企業の方が出てきます。この中で印象に残っている方はいらっしゃいますか?
【主藤】 結構いますね。でもこれは出版の裏話になるのですが、僕としては、この本に載る予定だったのに載らなくなってしまった方々の方が印象に残っています。当初監修してくれと私に渡された段階で、掲載の候補が多分80人位いたのですね。通常監修というのは、監修を依頼された側が「はい、いいですよ。」と返事をすることで、仕事は終わります。
けれど、僕としては、しっかり中身も見て、自分の意図を入れ込みたいという思いがありました。「プロローグ」の部分も自分で書きましたし、本の中からそれぞれの方々のどこが学びになるのかというエッセンスを太字にしたり、彼らが言っていることを端的に表すとこうなるなという要素から目次もすべて自分で作ったりしたのですね。
【川崎】 すごくわかりやすかったです。
【主藤】 ありがとうございます。それは、通常の監修者以上の仕事なのですが、させていただきました。それで、そこから実際に掲載される方を70人に絞りました。残り10数人の方々は、色々な理由があって残念ながら掲載させていただかなかったのですが当然出版社としては載せたい方で、誰もが知っている方々でしたので一番悩んだわけですね。そういった意味で印象に残っているのは実はそちらの方だったりします。
成功への道は人によってさまざま
【川崎】 この中にある沢山の起業家の方々の体験に共通点はありますか?
【主藤】 自分らしさを出しているところだと思いますね。先ほど言った、当初80数人いた中で70人を残す中でも、当然皆さんなんらかの自分らしさを持っていた。でもその中で、自分らしさがわかりやすく伝わってくる人、表現されている人を残していきました。
知名度や会社の規模は関係なく、自分らしさが醸し出されている人かどうか。常識とは全然違うことを言っていたり、まさかこの人がこういう風な発想をしているとは思っていなかったりとか、いろいろですが、それも全て自分らしさなのですね。“常識はずれな”という方が分かりやすいかもしれないですね。
【川崎】 みなさんそれぞれに共通点はありながらも、経験や育ってこられた背景、ぶちあたる壁などは違いますよね。読む方の経験もいろいろなので、自分と考えが合うからこの人のようになりたいと思う人もいれば、ちょっと背景が違う育ち方だからこの人の言っていることは違うと感じる人もいる。
これはわかりやすいのですが、反対に少しわかりにくいかなと思ったのは、一冊の本の中で一見正反対のことが書かれているところですね。例えば「マニアックになる自分を探せ!」とおっしゃっている一方で、「欲を捨てて、お客様の得を見つけ出せ」とある。ここで意図されていることは、何なのでしょうか。
【主藤】 わかりやすく言うと、「十人十色」と集約されるでしょうね。とかくこういった経営やビジネスの書籍というのは、何か一つの答えを探しがちだと思うのです。これは、受験勉強あるいは、資格試験の勉強が影響しているのだと思います。受験や資格試験というのは、ある一定ラインの点数を取れば、まあ合格なわけです。基準が明確なのですね。
記述式は別として、往々にして答えは一つしかないのですね。ところが、世の中というのは、みなさん社会に出られて働かれているのであればおわかりの通り、答えというのはあってないようなものなのですね。答えと思っていることと全く正反対のことをやったらうまくいったとか、あるいは、常識的と世の中で言われていることと反対の非常識なことをやった方が評価されたなどということは多々あると思うのです。私の場合ですと、NTTの代理店のビジネスで、日本でトップになったことがありました。
けれどそれは、当時法人向けに売るのが常識だといわれていたデジタルの電話回線を個人に販売したというまったく非常識なことをやって成功したわけです。先ほど十人十色と申しましたが、何が正解であるかは、人によってあるいは自分がいる分野によって変わってきます。それを一つの答えで、法人向けの商品であれば法人にしか売ってはいけないなどとしてしまうと、成功の可能性が閉ざされてしまうことになるのですね。他に私が経験した例では、プリクラも法人向けの商品でした。これを私は実際個人に売って成功したわけですから、プリクラは法人にしか売れないと教えてしまうと、個人に売る発想ができなかった。
人によって違うのですよね。分野によっても商品によっても違う。業界によっても違うし、タイミングによっても違う。そういったことをわかっていただきたいという意味ですね。本全体を通して「こうすれば良い」という筋を通さずに、一人ひとりの相反する考えを生かした。70人もいらっしゃるので、それぞれに意見が異なるのは当然かもしれませんが、あえてそういう風なところを生かした本に仕上げていますね。
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