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鈴木貴博
百年コンサルティング株式会社代表取締役社長 [ 仕事術 ][ 経理・会計 ][ 経営 ][ インターネット ]
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鈴木貴博
[インタビュー]
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戦術論ではなく戦略論に強くなろう(2)
2007.02.25
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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企業の寿命が30年ではなく100年続くためにはどうしたらいいのか
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理想はオンリーワン状態を作ること
高城 この8つのテーマの中でまず冒頭でイトーヨーカドーさんの話をしたんですけれども今回のメインのタイトルにある「アマゾンのロングテールは二度笑うか」っていう話もありますけれど、このテーマを幾つか出していった切り口というのはどういう発想から選んだのですか?
鈴木 これはですね、今経営論の世界の中でわりと注目されている領域を8つ選んだつもりなんですね。というのは経営論の世界って今いろんな注目点が出てると思うんですけど、各々社会が変わってますから今まではこれが正しいって言われていたセオリーが最近ちょっと変わってきたりする。そういうセオリーが変わってきたりする領域を8つ選んだ訳です。
川崎 なるほど。この帯のところに『ドミナント戦略』『オンリーワン戦略』と書いてあって、こういうことを取り上げていらっしゃるんですね。
鈴木 その1つ1つの領域っていうのは経営理論からすると、今までの常識が変わっていたり、新しいセオリーがどういう風になっているのかっていうのをいろんな学者さんが模索している分野なんですね。ただそういった領域ってすごく難しいじゃないですか。分厚い経営論文が出ていたり。それを僕なりに分かりやすく解釈すると今こういうことが起きているんだろうという解説を試みてみたつもりなんです。
高城 私がこの本を読ませていただいて思いましたのは、ビジネスの成功って世の中で注目を浴びてすごい、という風に言われている瞬間は実はそのプロセスで頑張ってきたものがあって、実は足元少しぐらついている。実はもっと前の部分のところで注目する成功のヒントがあるというのがすごくここから分かるんですね。世の中で注目されているものが時代遅れになっているとは言いませんけど、そこが本当に1つのピークなんだろうなっていう気がしたので。この8つの戦略をお書きになるにあたって、本当はもっと書きたいテーマが幾つかあって、そこから8つに絞ったんじゃないかなと思っているんですけど、幾つぐらい探したんですか?
鈴木 全部で10とか20とか。例えばこの本の続編を書こうと思ったら書けるぐらいのネタはあるんですけれど、でもやっぱりこの8つが今一番旬だというところまで一通り絞り込んでいますね。
高城 そうですか。
鈴木 例えば今高城さんが仰った中で、本当のビジネスの芽っていうのはもっと注目を浴びてないところに始まっているっていうのはちょうど3章に書いてある「オンリーワン戦略」っていうところなんですね。よく勘違いされるんですけど、戦略って戦うことをどう上手くやるのかを考えることだという風に言われるんですけど、そうじゃなくて戦いが無い世界っていうのは一番お客さんにとっても会社にとってもハッピーな状況なんですね。例えば3章の中にQBハウスっていう床屋さんが出てくるんですけれど。
川崎 駅にあったりする、1,000円でカットをすごい速さでしてくれるところですね。
鈴木 あの会社ですね。今、オンリーワン状態でなかなか大手の競争相手っていうのが出てきていない。何で出てきていないかっていうと、どうもあれは床屋と違うなって思っちゃうんですね。
川崎 それは消費者がですか?
鈴木 消費者が、というか他の床屋さん達が伝統的な床屋さんっていうのはもっと時間をかけて丁寧にやるものだ、とか、きちんと顔の髭を剃ったり、もっとサービスをするべきだという風に考えていて。あれはちょっと違う人達だな、と思われてしまう。
川崎 自分達の領域をあまり侵されている感覚ではないんですね。
鈴木 本当はビジネス上はものすごく侵されているんですけれど、自分達が違うものだという風に見えてしまうので、どう戦っていいかが分からないんですね。その結果、競争が起きにくい。誰が競争相手なのかよく分からなくって、とりあえず成長してしまうっていうのがオンリーワンの状態なんです。このオンリーワンの状態を作るのがビジネス的にはすごく理想なんですね。
『ロングテール』とは
高城 この8つのテーマのメインのタイトルの『アマゾンのロングテール』ってよく言われる話のようでもあるんですけど。
川崎 アマゾンっていうのはネット上の本屋さんのアマゾンドットコムですよね。ロングテールっていうのはどういうことですか?
鈴木 これはですね、アマゾンドットコムに売られている本はものすごく数が多いんですけれど、ある人が調べてみたところ、どうやら売れ筋の本だけではなく、年間に1冊とか2冊とかあまり数が出ないような本がざーっといっぱいあって、どうもそっちが沢山売れているらしいぞ、と。普通の本屋さんでいくと売れ筋のベストセラーの本だとかそういったものを100冊ぐらい集めてしまうと、大体それでほとんどの売り上げになってしまうのが今までの書店の常識だったんですが、アマゾンの場合は、売れ筋じゃないところの本の売り上げを全部積み重ねると全体の売り上げの3分の1から半分くらいいってるんじゃないか、という風に仰る方がいて。これがロングテール現象という風に名付けられたんですね。ずっと売り上げのリストを作ってきたときに1冊、2冊の本のところ、いわゆるしっぽを集めてみるとしっぽが非常に長いので、これは全部集めるととっても売り上げが高い、ということで注目されたのがロングテールなんですね。
高城 ロングテールというのはまさにインターネットによって生まれたビジネスのチャンスですね。今、書店ではすごい偏りが多いですよね。
鈴木 そうですね。欲しい本で無かったらアマゾンで買うっていう行動を消費者はとりますよね。
高城 そこが本当に世の中のマーケットが変わってきたのかなっていう感じがしますよね。WEB2.0みたいな話の中でロングテールという話はよく出ますけど、おそらく鈴木さんのこの本の中ではまだまだ書き足りない部分が沢山あるんじゃないかな、とすごく思ったんですけど。
鈴木 ロングテールは多分1冊本が書けちゃうと思うんですよ。ただ今回はどこに話を絞ったかって言うと、ロングテールというものは注目されているけど、結構世の中を調べてみるとこれは本当に儲かるんだろうか儲からないんだろうかということで「これはすごく儲かるんだ」という人と「これは一見儲かるように見えるけれど気を付けなきゃいけないんだ」っていう人に論調が分かれているんですね。
高城 そうですね。
鈴木 これに僕なりに結論を出したい、という風に思って書いたんですよ。その結果はこれは儲かる。二度笑うんだ、と。つまりロングテールが無かったら1回しか儲からないところをロングテールがある会社は2回笑うことが出来るということを数値分析で示したかったんですね。
高城 本の中でもかなり具体的な数字が出ていますので、読んでいただくと1つ1つがすごく納得性が高いんじゃないかな、と思いますね。今日はその8つのうち2つだけをお話したので、残りの6つについてはぜひ本を読んでいただければよろしいんじゃないかなと思います。
土評論を考えてみましょう
高城 まだまだお話をお聞きしたいのですが時間のほうが迫ってまいりましたので、最後に読者になっていただける可能性が沢山あるリスナーの皆さんに、ビジネスに活かせるヒントやアドバイスがございましたらいただけますか。
鈴木 自分が非常に優秀だと思っているのにどうも会社の業績が伸びない、苦しんでいる、という方にぜひ土俵論を考えて欲しいですね。今自分の戦っている土俵が自分の会社にとって有利な土俵なのかどうか。それはぜひディスカッションパートナーを誰か見つけて、誰かと対話しながら「うちの会社はこうなんだけれど、僕の今やっていることっていうのは良い土俵で戦っているんだろうか」といった形で確認をしたほうがいいんじゃないかと思います。ぜひそういうことをやってみられてはどうか、という風に思います。
川崎 有難うございます。本日のゲストは『アマゾンのロングテールは、二度笑う』の著者でいらっしゃいます鈴木貴博さんでした。
高城 鈴木さん、本日はどうも有難うございました。
鈴木 有難うございました。
川崎 有難うございました。
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