|
|
神田昌典
作家/経営コンサルタント
|
|
|
|
神田昌典
[インタビュー]
|
神田昌典が時代を読む!Part3-(2)
2007.08.16
|
|
これからの時代認識 Part2
|
――――今日は3回目ということで、初め「ビジネス」から始まって「個人」をお話しましたね。最後は「社会」ということなんですが、この「社会」も実を言うと周期があります。この周期がわかっていただけると、これから世の中がどういうふうに変わるかというのがわかるのです。
これは70年周期なんですね。政治でも経済でも70年周期があるというふうに言われています。この周期はいろいろな周期があるんですね。 30年周期と言う方もいらっしゃるし、60年周期と言う方もいらっしゃるし、70年周期と言われる方もいらっしゃるし、80年周期と言う方もいらっしゃるし、いろいろな周期があると考えてください。その周期の中でどれが自分にとってわかりやすく社会を認識できるかという観点で考えていただきたいのですが、今の時代で言えば70年周期が私としては非常にぴったりと時代を説明しやすいツールであると考えています。
ちょうど今から70年前というと、日中戦争が始まる時期ですね。それからさらに70年遡りますと140年前、明治維新の時期になります。どちらも時代が大変革している時期でありますよね。 僕はまさに大変革すると考えていまして、2015年から全く新しい時代に入るだろうということを4、5年前から言い始めています。 こちらの「人生の旋律」というノンフィクションの本がありまして、この本は戦争体験をした人をまとめた本なんですけど、「経営コンサルタントがなぜ戦争体験の本を書いたの」ということで初めは多くのバッシングをいただきまして、「こんなもんは、神田さんは書くな」と言われたんですけど、僕の意図はここに書かれていることがどうだという話ではなく、同じような時代のエネルギーが今あるわけだから、こういった大きな価値観が揺るがされるときにどのように力強い人が生きてきたのだろうかと。それを先人の知恵に学ぶときが来ているのではないかと2005年に言い出しまして、本を出したんですね。 そうしましたら、その当時は戦争なんていうものは考えられないような状況でしたけれども、2006年に北朝鮮のテポドンの問題がありまして、やはり国家間の紛争について多くの人達が考え始めたということがあると思います。
このように時代認識というのを70年の周期で見ていると、結構時代の空気というものが読めるわけですね。2年、3年前に読めるようになると。これが結構大事だと思います。 これを聞いて「戦争が起こるんですか」なんて恐れられると困るので、「いや、戦争が起こる、起こらないではなくて、そういう大変革の空気というものがありますよね」ということなんですね。その変革がある程度安定してくるのが2013年から2015年ぐらいなので、「そのときには全く価値観が違うよ」ということを僕は言いたいわけです。
例えば70年前、一番のヒーローは誰だったかというと、「僕は陸軍大将になりたい」と多くの子供が言っていたようにやはり軍人だったわけですね。ところがその軍人というのが一夜を経てしまいますと、社会の最も非難を浴びる人であったということなんです。 僕はビジネスマンについても全く同じことが言えるというふうにこの本を書いたときから言っていまして、2005年のときに言っていたのはこういった価値観の変動しやすい時代において一番のヒーローと言われる人達、すなわち一番若くして大成功した人達の経営者が非常にバッシングされやすいんですよと。それが一夜にしてヒーローから戦犯になってしまうということを言っていたら、ライブドアショックが起こってしまったというような感じなのです。 この傾向はライブドアショックで終わったかというとそうではなく、これからも続きますので、ビジネスをやっている方はその時代認識というものをきちっと見極めていただかないと、いつのまにかヒーローから戦犯になってしまうと。今年もそういうことが起こっていますけど、そういう時代に差し掛かっていますので、極めて重要な認識だというふうに私は思っていますね。
そして140年前の明治維新で世の中が変わったということは当たり前のことですけども、それだけではなくて僕が注目しているのはパリ万博があったんですね。パリ万博のときに日本館というのがあって、その日本館ではさまざまな日本の美術品が展示されて、そしてジャポニズム。日本主義というものがヨーロッパ中で大ブレークしていたんですね。 すなわち日本の芸術品であるとか、日本的なものが大ブレークしていたというジャポニズムの時代があって、陶器を輸出してたわけですけども、その陶器の包み紙が浮世絵であって、それが印象派に大きな影響を与えたと。
明らかに日本の影響がものすごく大きい時代だったわけですけども、それと同じようなサイクルで今、日本の文化というものが非常に注目されてきているということと、日本人のアーティストでもヨーロッパで活動している人が非常に多くなってきて大変評価されてきている時代に入ってきているんです。 こういったアーティストを評価した人達というのは実を言うと商人であると。当時、陶器を輸出していた商人は当時のアーティストの作品をわかって、包み紙にして出していたということなんですね。 ですからこういった時代サイクルを見ますと、やはり今の時代に何が必要かというと、アート的な感性であるとか、世界に対して発信することがとてもトレンドというか、時代の空気を読むうえでは必要になってくるかなと。そういうことを感じ取っていただくとビジネスにとっては浮かんでくるかなというような感じがいたします。
今回は時間の関係でほんの一部しかお話できませんけども、こういった70年サイクルで見ていくと、さまざまな気づき、自分の事業分野に対する気づきというのが出てきたり、そういった観点で昔の映画、70年前の映画を観ていただくとそこに出ているレストランのインテリアが実を言うと、今のレストランのインテリアと瓜二つだったりするんですよね。ですからやはり時代というのは繰り返し回るということをお感じになっていただければと思います。
この70年というのは、世代が作っていることなんですね。私は時代を作る人と広げる人と良くする人とそしてまとめる人と、こういう4つのカテゴリーで言っていますが、それぞれの世代がこういった時代を作っているということなんです。世代がバトンタッチするような形で歴史が作られ、そして社会が動いていくので、言ってしまえば、みなさん一人一人がそういう時代を担って、みなさん一人一人の行動が社会の周期を作っているということがわかり始めると、もう既に未来予測のツールは手にしたようなものですから、これから子供の教育をどうしていったらいいか、10年後の世の中はどういうふうになっていくから子供の教育をどうしたらいいかとか、自分は今、どういう業界に勤めたらいいかとか、今ヒットするコンセプトは何かとか、そういうものがわかり始めてくる。そうすると街を歩いているだけで楽しいんですね。お酒を飲んでいるだけで楽しい。お酒飲んで楽しいのはみんな同じかもしれませんけど、ほんのちょっと会話をしただけでも楽しいし、街を歩いただけでも楽しいし、子供達と話すのが楽しいし、おじいさんとおばあさんと話すのも楽しいと。 なぜならそこから今、生きている時代の意味というものがわかってくるからですね。やはり誰でも自分が生きている意味というものがわかれば、この世の中、今生きていること自体に感謝できますし、楽しくなってくると思うんですね。そういうところからビジネスがあるんだなというふうに思うんです。 そうするとビジネスというのは、誰もが楽しめるツールになるし、誰もが世の中に対して貢献できるツールになるというふうに思っています。
今回、未来予測、トレンドを読むという話で進めてきましたけども、テーマと大きく違ってしまったところがあるかと思います。まだまだまだまだ話したいことはいっぱいありまして、こういうことを聞いてくれたあなたに感謝すると同時にまたご縁がありましたら、私の話を聞いていただければと思います。
はい、神田さん、どうもありがとうございました。
――――ありがとうございました。
「神田昌典が時代を読む」次回もお楽しみに。
|