「神田昌典が時代を読む!」この番組は作家として、また経営コンサルタントとして活躍する神田昌典さんにこれからの世の中のトレンドを見通していただき、ビジネスパーソンが激動する時代をいかにして乗り越えていくべきか、アドバイスをいただきます。それでは神田さん、第5回目のお話よろしくお願いいたします。 ――――よろしくお願いいたします。
今日はですね、雑談から始めたいと思うんですけども。と申しますのは、昨日まで私、海外出張に行っておりまして、メキシコにありますロス・カボスというバケーション地に行っておりました。なぜそんなバケーションで有名な所に行っていたのかといいますと、ある国際会議に出ていたんですね。どういう会議かというと、トランスフォーメーション・リーダーシップカウンセルという、そういう名前がついた会議なんですけど、大体アメリカの著者を中心に90人程の著者が集まって、そういったバケーション地で家族を含めて交流し合うという、そういう謎の会議なんです。謎の、と言った意味はなぜかというと、ほとんど情報がなくてですね、一般の誰もが参加できるわけではなく、招待がないと参加できないんですけども、私がヒョコヒョコと日本から出て行きまして、そちらの会議に出て参りました。
アメリカの著者の人が多いんですが、どういう人がいたかというと、日本で著名なところでいいますとジャック・キャンフィールド、『こころのチキンスープ』という一連のシリーズの本を出している方がいらっしゃいますけども、彼であるとか、ジョン・グレイさん、タイトルは正確にはちょっと思い出せませんが原文から翻訳しますと「女性は金星から来て男性は火星から来た」、そういうタイトルの本をお書きになっているジョン・グレイさん。そういった方々が集まってきているんですね。そういう方々が90人くらい全米から、そして何人かの著者は海外から来るわけなんですけど、その内の1人が私だったんです。
こういう会議に出るとですね、何をアメリカ人は考えているのか、そしてアメリカの社会というのはどういう社会になりつつあるのか、というのが結構わかってくるんですね。そこでどういう印象を受けたかという話も含めて、お話していきたいと思います。
大体、トランスフォーメーション・リーダーシップカウンセルという名前自体が怪しいですよね。トランスフォーメーションは何かというと“変革”ですよね。変革を起こすリーダーシップの会議ということ。でも行くとですね、いきなり歌手が出てきまして歌が歌われ始めるわけです。この歌手の人達もそもそも自分が著者だったりします。それからアルトサックスが吹ける人がいるんですけども、僕は彼とはイギリスでも会いましたが、「ソリューション・フォーカス」という本がありまして、日本でも翻訳が出ていると思いますが、その「ソリューション・フォーカス」の著者のうちの1人がこのサックス吹きでして、彼がイギリスから来てわざわざサックスを吹く。それがオープニングで、ほとんど遊びだか会議だかよくわからん、と。8割は遊びだ、ということなんですが、そういう人達が集まってこういった会議をやっているわけです。
目的は何かというと、世界を変えるんだ、というような感じなんですね。それ以上の目的というのは、恐らくあると思うんですけど、わかりやすく言ってしまうと世界を変革するリーダーのための会議。でもそれは僕から言わせてもらえば、トランスフォーメーション・リーダーシップカウンセルのロゴがありまして、ロゴには羽根が2枚あるんですね。そこに「TLC」と真ん中にあるんですが、これって明らかにショッカーだろう、みたいな。ショッカーのロゴとすごく似ている。これは世界征服のための会議か、なんて。たまたま持って行った新書が岡田斗司夫さんの『「世界征服」は可能か?』という新書で、すごく面白い本でそれ読んでいたもので「あぁ、こういうところで世界征服っていうのは計画されているんだ」なんて思ってきたわけです。
非常に面白いのは、なぜこの話をしているかというと、僕はアメリカ人の中でそういったセミナーに入るということが非常に多くて、英語学習する上でも僕はすごく勧めていることなんですけど、意外と日本から行く人はほとんどいないんですね。結局、著者の人達というのは影響力を持つ人達なので、彼らがどういうところを考えているかということを肌で感じ取っていくと、2、3年後にどういう本が出る、とかそういうのもわかりますし、どういう社会を目指しているのかというのも結構わかるんですね。ですから僕は、時々そういうところに行って彼らの肌感覚というものを共有してきます。
それで数年前からそうなんですが、例えばビジネス、日本で言うビジネスマンという考え方は、例えば5、6年前、日本で「ビジネス」というと大体どんなことを考えられていたかというと、ITという言葉ももちろんありましたけど、どちらかというと実業とかサービス業の方々が集まるケースが多かったんですね。例えば研修会であるとかセミナーというものを日本で開催するとどういう人達が集まるかというと、住宅会社をやっていますとか、リフォーム会社やっていますとか、自分は歯医者やっていますとか、自分は小売店やっていますとか、そういう方々が集まるケースが多かった。その時期にマーケティングのアメリカのセミナーに参加しますと、そういった方々はほとんどいなくて、自分は環境に関するアメリカのレギュレーションが変わったのでその解説のCD売っていますとか、解説のCD−RMを売っていますとか。それから自分は環境関係で新しいこういった商品のテクノロジーというものがいろいろとあるので、そのマッチングサービスやっていますとか。基本的に、情報主体のマーケッターの人達というのが非常に多かったわけです。それからやはり日本もITバブル等を経まして、そして今見ると、やはりだんだん日本の社会事態がノウハウであるとか情報というものを価値にして販売してくる。これは携帯電話の情報コンテンツ、例えば携帯の公式サイトというのがまさにそういうことを示していますけども、昔は「着うた」にしても何にしても、こんなことでお金になるとは思いませんでしたが、それがもう巨大市場になって星占いの情報を提供しているだけで大変な価値を生むような会社になっている。大きく変わってきたんですね。
ですから、アメリカが常に正しいというわけでは全然ありませんし、アメリカで起こっていることが常に日本でも起こるということを言いたいつもりでは全然ないんですけども、私がここで感じることは、やはり1つの情報ソースとして彼らアメリカ人の著者の人達であるとか、アメリカ人のビジネスマンが何をしようとしているのかというのを感じ取っておくと、日本もそういう時代が来るのかな、ということが見える気がするんですね。
そこで今回感じたことを言いますと、自己啓発系の著者が多いとか、心理学系の著者が多いということもあるんですけども、非常に面白いのはスピリチュアリズムと言いますか、精神的な気づきを持った人が非常に多くて、日本でも江原啓之さんであるとか美輪明宏さんであるとか、そういう方々がテレビに出てきていますよね。今までだったらとてもお茶の間に受けいれられるような話ではなかったわけです。「オーラの泉」であるとか、それから霊視であるとか、そんなものはやはり宗教の話であってとても受けいれられないというような状況で、今でもビジネスとそういう世界とはまったく隔絶されているものだと思うんです。ところがですね、実際そういった著者の集まるミーティングに行きますと、自分のワイフはスピリチュアルカウンセラーであるとか、そこに参加している人の中には自分はアストロロジャーであるとか、そういう関係の人が大体どのくらいだったかな、3割ぐらいいました。だから、そういった面でビジネスマンとそういう人達とが何の違和感もなく場を共有しているというのは、結構当たり前と言ったら当たり前なのかもしれませんけど、それを明らかに見せられますと、「ほぉ、アメリカでは極めてナチュラルにそういう人達がお互いコミュニケーションし合っているんだな」というのを感じました。
もちろんこれがですね、例えばSP500のような大企業さんではそういうことはあまりないんですけれども、いろんなビジネス書を書かれている方、自己啓発書を書かれている方の周辺にいかにそういう人が多いか、ということが今回のツアーでは今までにも増して感じられたかな、というふうに思います。今までですと同じような集まりに行っても、なかなかスピリチュアルカウンセラーです、なんて自分で言う人はほとんどいなくて、そういう人達というのは別枠で、そういう人と付き合うこと自体が迷信なんじゃないかとか、ビジネスマンとしての資質が疑われる、ということがあったと思うんですけど、今回はまったくそういうことがありませんでした。ですから日本が今後どうなるのかわかりませんけども、テレビのお茶の間のような状況を考えてみると、違和感なくそういった精神的なこと、理解というものが重視される世の中になってくるのではないかな、ということを感じました。
そして、その帰りに飛行場に寄ったんですが、確かロサンゼルス空港に着いた時だと思いますけども、広告を見るわけなんです。広告を見るとですね、何があるかというと、マイクロソフトさんの広告でしたけど、マイクロソフトさんがどうであるかということは別としてですね、やっぱりモバイル文化というものが急速にアメリカでも広がっているということが言える、と。
というのは空港にデカデカとですね、今やこのくらいの小さなところでエクセルからパワーポイントからワードから全部使えるというようなことで、どういうキャッチフレーズだったかというと、「事務所から出た。ようし仕事を始めよう」というキャッチフレーズでデカデカと広告キャンペーンが貼られている、ということがありました。そしてそのロサンゼルス空港でアメリカ人がどういう仕事をしているかというと、このくらいの小さいサイズの画面があるPCにペンタブレットで編集を、ワードドキュメントの編集をやっているというような状況が見られてきているんです。
(2)に続く