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伊東明
株式会社東京心理コンサルティング代表取締役社長 [ コミュニケーション ]
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伊東明
[インタビュー]
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「聞く技術」が人を動かす ビジネス・人間関係を制す最終兵器/光文社(2)
2006.06.11
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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「人の話を聞く」ことは、その裏にある背景に ものすごく深いものがあると思うのです。
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相手の話しを聞くためには、まず相談からはじめよう
【高城】 本の中でNGダイアログとしてたくさん耳の痛いようなケースが登場しますが、伊東さんが日常の中でよく見たシーンですか?
【伊東】 そうですね。私の場合、なるべく取材をするようにしているので、居酒屋さんに行った時に隣のサラリーマンの会話をずっと聞いたりあするときもあります。
会話内で「これ、使えるNGダイアログ」と思うと、ササッとメモをしたり、独身時代、合コンに行った時にも男性がどんな会話をしているかをずっと頭の中でせりふを暗記して、家に帰ったらすぐワープロに起こし、それを本の中で「NG、OKダイアログ」として書きますね。
【川崎】 だからリアルなのですね。
【伊東】 作った会話ではないので、生々しい会話だと思います。
【高城】 一般的に「聞く部分」で一番できていない、気になると思う人の弱いところはどういうところがありますか?
【伊東】 先ほども出てきたのですが、聞く量が足りていない人が圧倒的に多いと思います。つまり聞く質、聞き方や質問の仕方や相槌の仕方以前の問題で、そもそも量が足りていないということです。
10分会話した時に8分自分がしゃべってしまうとか、上司部下でいうと10分部下と会話すると部下は「はい、はい、わかりました」しか言わせてもらえないパターンが多いですよね。そもそももうちょっと量を増やしましょうよ。部下と飲んだ時だけでもいいから、30分会話をしたなら10分ぐらいしゃべらせてあげてください。 量をきちんと意識することがまず第一ですね。
【川崎】 やはり欲求として、なぜかしゃべりたくなりますよね。その時にちょっと我慢すればいいと思いますけど、聞く経験を積むための何かいい方法はありますか?
【伊東】 相槌から始められたらいかがでしょうか。話をしたくなるところを、まず「なるほど」と言う。受け止めがない人がすごく多いです。
例えば相手が「僕はこう思うんですよね」「それはさあ」とすぐに返してしまうのです。 相手が「僕はこう思うんですけどね」「なるほど」とまず1回飲み込んでください。 「なるほど」と言うと頭の中で思考が始まって「なるほど彼が言いたいのはこういうことだな、こういう部分が弱いのかな、じゃあこういう質問をしてみようかな」という思考が頭の中で始まりますから、もう少しゆったり待てるようになるわけです。
ところが相槌をしっかりうたないと、すぐ自分のせりふが始まってしまう。「なるほど」以外に挙げるとすれば「鈴木くんはそう考えているんだね」「佐藤さんのお考えはそうですか」「鈴木さんはそこがご心配なんですね」のように何か受け止める言葉を1個言うと自分も落ち着き、余裕モードでもっと聞けるようになると思いますよ。
コミュニケーションのコツは、想像力を使うこと
【高城】 簡単なようで難しいですね。でも明日から始めてみたくなるようなことですよね。
私はこの本を読ませて頂いて感じたのは、聞き上手になるためにNGダイアログの中で話す相手の方に上手に話すためのキーワードをものすごく上手に投げていますよね。たぶん投げかけ方がすごく下手な人が多いのだろうなあと思ったのです。
失敗例は我々もものすごくたくさん見ますけど、OKダイアログはどういうところで探したのか、興味ありますね。
【伊東】 コミュニケーションのコツの1つに想像力があるのです。 想像力をいかに使うかという話です。
想像力はあるかないかではなくて、普段から使うか使わないかです。OKダイアログを考える時にも、ずっと頭の中でシュミレーションするわけです。「相手がこう言いました」「次の質問、こうしましょう」「えっ、これって自分が相手だったら何点ぐらい嬉しい気持ちになるかな、何点ぐらいわかりやすい質問かな、じゃあ10点もっとやさしくなる質問ないかな、もう20点されて嬉しくなる質問ないかな」というふうに、常に想像力を使っていくのです。そうすると最初は結構大変ですよ。いかに自分が何も考えていなかったのかがわかって落ち込んだりします。
ところが1週間、2週間してくると、自然に想像力のスピードがすごく速くなってくるのです。すると気がつくと瞬間的にいい質問ができるようになっていたりします。 だから常にシュミレーションしてください。今からお客さんのところへ行く場合、佐藤部長さんという人がいたとしたら、「佐藤部長だったらどんな質問して欲しいだろうかな、どんなリアクション期待しているだろうかな」というふうに、たった1分、2分でもいいから想像力を使ってから場に臨むのと何も考えずに臨むのとでは全然違いますからね。
【高城】 アドリブでやってはいけないですかね。
【伊東】 アドリブができるようになるまでにはやはり練習、筋肉を鍛えておくことが大事ですよね。
【高城】 我々も練習しなくてはいけないですね。仕事柄、聞かなくてはいけないですからね。
【川崎】 本にOKダイアログ、NGダイアログとありますけど、その中のオープンクエスチョンとクローズドクエスチョンをとても興味深く拝読しました。 クローズドというのがいわゆるYes、Noクエスチョンみたいな感じで限定したまま聞いてしまう。オープンの方は向こうに答える自由を結構与える。それを考えるだけでもうまく聞けるような気がしますね。
【伊東】 そうですね。オープンクローズドは非常に有名なスキルですけども、「実際あなたは使っていますか」というと使っていない方が多いですね。言われてみれば当たり前ですけどね。
よくあるパターンとして営業マンの方で、クローズドばかりやって話が続かない。「いい天気ですね」「はい」「夏休みはどうでしたか」「よかったですよ」で、すぐ終わってしまう。オープンクローズドの両方使える人が強いのです。クローズドが悪いわけではないです。
両方にメリットデメリットがあって、やはりクローズドの答えやすさというメリットを使う。ある程度きたら広げるためのオープンを使ってみる。最後にクローズドで締めをやってみる。これはやはり武器を意識して使うか使わないか、ただ何となくやるのか、やはりきちんと意識するかどうかの違いですよね。
【高城】 おそらく話ながら頭の中で次の話のシナリオをぐるぐる回していなければいけないのですよね。考えなければいけないですよね。
【川崎】 そうですよね。ビジネスだったらなおさらですね。
【高城】 この本は7万部というベストセラーになり、たくさんの方がお読みになって反響も大きかったと思うのですが、実際に読者の方と接する機会や具体的な感想を聞かれたことはありますか?
【伊東】 はい。感想で一番多いのは「このスキルがよかった」というのではなくて、「私、今まで‘聞いて‘いませんでした」というのがすごく多いですね。非常にシンプルに「聞くことを大切にしていませんでした」「そもそも聞いていませんでした」「聞くことは大事ですよね」という非常にシンプルな感想が多いですね。
職種によって、「私の職業でいうと、このビッグスモールクエスチョンがすごく使えました」とか「うちのお店では相槌からお店を変えることにしました」とか。あとはやはり個別の部分ですけどね。
【高城】 実際に相談を受けるようなこともあるのですか?
【伊東】 ありますね。私はカウンセラーではないので個人相談の場はやっていないですけども、企業研修に行くとどうしても休み時間などに「私はどうして結婚できないのですか」という質問から、「部下がうつ病になってしまって」という質問までいろいろですね。やはり心理学者というだけで、人生のありとあらゆる質問をみなさんぶつけられてきますからね。
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