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本間 裕
経済評論家、第一商品「経済・商品セミナー」レギュラー講師 [ 資産運用 ]
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砂上の楼閣となったECB
2011.07.09
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最近、ヨーロッパで問題になっていることは、 「PIIGS」と呼ばれる国々が「きわめて危機的な状況に陥っている」 ということだが、より深刻な問題としては、 「ECB」という「欧州中央銀行」についても、 「大量の不良債権を抱え、実質的には、 破綻状態に陥っているのではないか?」 という懸念が出始めていることである。
つまり、「ECB」というのは、 ユーロ圏17カ国の金融政策を担う「ヨーロッパの中央銀行」なのだが、 過去数年間の「金融危機」により、「バランスシートが大膨張し、 不良債権を大量に抱えている可能性がある」 とも指摘され始めたのである。
具体的には、「自己資本」に相当する金額が、 「約810億ユーロ(約9.3兆円)」でありながら、 「総資産」が「1.895兆ユーロ(約218兆円)」 にも達すると見られているのである。
つまり、「自己資本の23倍もの資産を保有しているのではないか?」 ということだが、このことが意味することは、 「資産の5%が不良債権になると、債務超過に陥ってしまう」 ということである。
しかも、この資産の多くが、「ギリシャ」や「ポルトガル」、 あるいは、「アイルランド」などに関連したものであり、 実際には、「すでに、多くの部分が不良債権化しているのではないか?」 とも見られているのである。
そして、今後の対応としては、 「自己資本を強化する」ということが想定されるのだが、 この時の問題点としては、 「ユーロ圏で3位の大国であるイタリアや、4位のスペインなどが、 危機的な状況に陥り始めている」ということである。
そのために、「1位のドイツや2位のフランス」などに、 「大きな負担」がかかり始めることになるようだが、 かりに、これらの国々が、「資金の拠出」を拒否した時には、 「ECB」が、「大量の紙幣増刷」をするしか 方法が残されていないような状況になっているのである。
そのために、「ギリシャ危機」については、できるだけ時間稼ぎをしながら、 問題が「スペイン」や「イタリア」へと波及することを防ごうとしているようだが、 この時に注目されるのが、「国債市場の動向」であり、 具体的には、各国の「10年国債の金利」が、 「どのような状況になっているのか?」ということである。
つまり、「ギリシャの17%」、「ポルトガルの11%」、 そして、「スペインの5.5%」というように、 これらの国々については、「市場からの拒否反応」が出始めているのである。
そして、これらの国々を救おうとした時には、 「ECB」という「ヨーロッパの中央銀行」が、 より一層の、危機的な状況に陥るという「悪循環」に陥っているのだが、 「王様の耳はロバの耳」という言葉のとおりに、 「真実を隠す」ということは、もはや、無理な段階に差し掛かってきたようだ。
2011年6月16日 本間裕(経済評論家、第一商品「経済・商品セミナー」レギュラー講師)
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