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片桐 明
株式会社コストダウン 代表取締役/インターネットFAX総合研究会 特別研究員
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第2回 紙にまつわるコストを考えたこと、ありますか?
2011.10.25
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前回は、生産性を高めるコスト削減方法として、 ペーパーレスが有効である旨をお伝えした。 ただ、コスト削減をするなら、紙より他のものを減らしたほうが、 効率がいいのではないか。 もしかすると、こういう意見が出てくるかもしれない。 しかし、ペーパーレス化に取り組んでもうまくいかないのは、 紙を減らす効果を理解していないからかもしれない。 今回は、紙にまつわる4つのコストについて紹介し、 共に検証していく中で、改めてペーパーレスの必要性を認識いただきたい。 ■ ■ ■ コスト@ 紙代にまつわるコスト
紙はそれだけで価値を生み出すものではない。 文章を紙に印字・複写する、伝達する、保管する、廃棄する の4つのライフサイクルがあり、それぞれのステップでコストがかかる。
【ステップ1】印字・複写 文書を作成してプリントアウト、もしくはコピーなどで紙が発生する段階。
〈紙代〉 A4用紙1枚につき 紙代0.5円 〈印刷代〉 ・買い取り機の場合 1枚当たりで使用する白黒トナー代約3円、カラートナー代約15円 ・リース機の場合 リース代……(例)オフィス向けのデジタル複合機のリース代 (5年契約の場合)月に約1〜2万円、年間に換算すると12〜24万円 カウンター料金……リース代のほかに、プリントアウト1枚ごとに数円〜十数円のカウンター料金を メーカーに支払うという保守契約を結んでいる場合が多い(トナー代を含む場合もあり)
【ステップ2】伝達作成した文書を配布、送信、回覧、決裁などの目的に合わせて処理。
・配布にかかるコスト 会議やプレゼンテーションなどで使う資料の場合 …ページ数×人数分×印刷代+クリップやホッチキスなどの留め具代+作成スタッフのコスト ・送信のコスト FAX送信の場合は電話料金、郵送の場合は封筒代+切手代がかかる ・回覧・決済のコスト ページ数×必要な部署ごとの枚数×印刷代
【ステップ3】保管
使用した文書を保存、もしくは保管。 オフィスの書類や紙の量を示すときに、ファイルメートル(fm)という単位を使う。 1fmは紙文書を積み上げた高さ1mのこと。 オフィスでの一人当たりの保管文書量は、オフィス内で5.7fm+書庫で2.2fm=7.9fm (株式会社エフエム・ソリューション調査)。
これらの紙を保管するキャビネットやスチール棚、書庫などの 設備も紙から生まれるコストになるのである。 また、さらに細かくなるが、保管するときに使うファイル、 クリアホルダー、ホッチキス、クリップ、シールなどの文房具も保管コストに含まれる。
【ステップ4】廃棄
役目を終えた紙を処分。 機密文書はシュレッダーにかけて処理。 シュレッダーの本体償却費+裁断人件費+電気代+裁断屑のゴミ袋代 また、大量の機密文書などは業者に頼んで廃棄してもらう ケースが多いので、そこでもコストが発生する。
改めて見直してみると、紙にまつわるコストは 「こんなにかかるのか!」と驚くばかりである。 紙代やトナー代ぐらいは誰でも意識するだろうが、 それだけではまだ不十分。会議用の資料を用意するのに、 1回につきどれぐらいのコストがかかっているのか。 無意識に送っているFAXにどれだけお金がかかっているのか。
自分の周りの紙の山、ロスはどれほどになるのか。 たとえ再生紙やリサイクルのトナーを使ったところで、 これだけコストを生み出しているとなると、 環境にもコストにも優しいとは言えないだろう。
■ ■ ■ コストA 大量のムダ紙のコスト
ペーパーレスの天敵、ムダ紙はどのような場面で生じるのか。 ・印刷する必要のない文書を打ち出してしまう ・印刷するとき、必要のないページまで印刷されてしまう ・パソコンの画面では読みづらいので、メールも文書も 印刷してから目を通す ・レイアウトを見るために何度も印刷して調節 ・FAXでDMが送られてくる このようにムダ紙が発生するケースがいくつか考えられる。 ムダ紙が多ければその分コストもかかるので、 知らず知らずコストを生み出す原因になっているのである。
■ ■ ■ コストB 情報漏洩のコスト
昨今、個人情報の流出をめぐって数々の事故や事件が起きている。 東京海上日動火災保険株式会社のホームページで紹介されている 個人情報漏えい保険の想定例では、 顧客名簿のデータベース化を委託した業者が 情報を流出させたケースの場合、顧客の一部(1万人)に、 プライバシー侵害を理由に1名あたり1万5,000円の損害賠償金の 支払いを命じられたとする。
すると、なんと賠償金の総額は1億5,000万円。 これは企業にとって相当な損害となる。 情報漏えいの対応や対策で使うお金もコストの一つである。 紙と関係ないと思うかもしれないが、 実は、紙は情報が漏れるリスクは高いのである。
ある調査によると、情報漏洩の媒体・経路は、
1位が紙媒体(65.2%) 2位がUSBなどの可搬記録媒体(12.4%) 3位が電子メール(8.9%) 4位がインターネット(5.7%) 5位がパソコン本体(3.9%)
となっている。 (NPO日本ネットワークセキュリティ協会、 2010年情報セキュリティインシデントに関する調査報告書上半期速報版)
このように、紙での情報漏洩は7割近くとダントツに多い。 ちなみに、紙媒体から情報が漏れた原因は、 保管中の紙を誤廃棄するなどの「管理ミス」、 誤送付や誤交付といった「誤操作」、「紛失・置忘れ」によるものが多いようだ。
■ ■ ■ コストC FAX用紙の取り忘れ&エラーによる 機会損失コスト
オフィス内で紙を使う業務としてFAXを使う作業があるが、 FAXを使用する上でも様々なトラブルが考えられる。 規模が大きい事業所では、社員が忙しく動き回っていて FAXが届いたことに誰も気づかず、放置したままというのはよくある話だ。 急ぎの受注や社外秘のFAXが届いてもそのままにしてあれば、 重大な機会損失につながる。
また、FAXをうまく送受信できずにエラーが出ているのに 気づかず、トラブルとなるケースもある。 ビジネスチャンスがあるのに、 紙の送受信の失敗によって生じる機会損失もコストの1つとして意識しておく必要がある。
いかがだろうか。紙はこれだけコストがかかるものだと 分かっても、削減する対象にはならないだろうか? ただし、紙をすべてなくそうとしたら、 ペーパーレス化はすぐに失敗してしまうだろう。 まず実行しやすい計画を立て、減らせたという 成功体験を積みながら進めれば、社内にペーパーレス化を 定着することができるに違いない。
今回は、普段何気なく使用している紙が、 いかにコストがかかっているか、またコストを何倍にも 増幅させてしまうリスクがあるかについて述べてきた。
ペーパーレス化の必要性を認識できた以上、 何らかの対策は打っておきたい。
次回は、紙を減らす具体的な方法について紹介していく。
執筆者:片桐明 インターネットFAX総合研究会特別研究員 株式会社コストダウン 代表取締役社長
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