東海地域は決して自然災害のリスクが低い地域ではありません。昨今は東南海トラフ地震への注意が喚起されていますが、直下型の地震の懸念もあります。また洪水被害もたびたび起こっています。いざ大規模な災害が起こったときには、物資が不足することは目に見えています。しかし、多くの自治体・企業・住民は十分な危機意識を持ち、災害に備えているとは言えません。名古屋市中川区の眞照は、いずれ来る災害に備えるために、地域の防災意識を高め、共助につながる災害備蓄を推進しています。
防犯機器・防災用品の製造・販売を手掛ける眞照(名古屋市中川区、代表取締役 倉吉光盛)は、災害避難所の住環境を改善する備蓄用品として、テーブル、椅子、ベッド、棚、靴箱の5つの用途に使える多機能段ボール箱「ミラクルボックス」を開発しました。2016年10月から全国の自治体や企業向けに発売を開始します。この商品は、「災害避難所の生活環境を改善したい」という、眞照の倉吉社長の想いから生まれた商品です。
ミラクルボックス(テーブルと椅子)
2011年3月の東日本大震災以降、眞照の倉吉社長は、災害時の避難所の実体を調査・検証しました。避難所におけるプライバシー保護と住環境の改善の必要性を強く認識し、これらを解決する備蓄用品の開発を決断しました。
眞照はまず、2014年にプライバシー保護対策として、ダンボール製のパーティション「D3(ディースリー)」を発売しました。工具不要で組み立てることができ、1セットで3畳×6部屋から、6畳×4部屋までの小間を設置することができます。保温性も高く、環境にも優しく、撤去も簡単という特徴を備えています。
ところが、パーティションでプライバシー面が改善されたとしても、災害避難者は依然として体育館の床の上での生活を余儀なくされます。床の上の生活は肉体的・精神的な苦痛が伴います。
体育館の床に直接寝ると、床に接する部分が痛くなるうえ、足音などが床から伝わり、安眠できるものではありません。また、食事をする際にも、床の上に食べ物を置いて食べることを余儀なくされます。特に高齢者など、腰や膝に支障がある方には大きな苦痛があります。気分的にも滅入ってしまいます。
さらに、避難所にモノが散乱することも、ストレスの原因になります。食べ物や生活用品があちこちに散乱するため、衛生的でなく、モノがなくなりやすくなります。また、体育館の入り口付近では、履物が散乱して、自分の靴を探すのも大変です。
そこで眞照は、このような避難所の現場ニーズに基づき、避難者の住環境を向上させるために、ベッド、机、椅子、整理棚、靴箱の5つの機能を、簡単に設置できる備蓄用品の開発に着手しました。素材は、軽くて持ち運びができ、人が乗れるほどの耐久性が必要でした。そこで、D3の素材でもあった段ボールで製作することにしました。問題は、5つの機能を段ボールによって、工具が無くても簡単に組み立てられる設計にし、さらに人が乗れるほどの耐久性を備える構造にすることです。
眞照はこのような避難所のニーズに応えるために、1年間にわたり、段ボール製造業者と一緒に企画・設計・試作を繰り返しました。そしてついに、4種類のパーツを組み合わせて、テーブル、椅子、ベッド、棚、靴箱の5つの用途に使える多機能段ボール箱「ミラクルボックス」を開発しました。
ミラクルボックスのパッケージと使用例
ミラクルボックスのセットの外箱のサイズは縦48cm×横48cm×高さ47cmで、重量は約14kgです。セットには、組み立てると段ボールパーツ、マジックテープ、布団すべり止めシート、軍手が含まれています。パーツを組み立てると、縦45cm×横45cm×高さ35cmの箱が8箱完成します。8箱を並べればベッドになり、そのサイズは、縦180cm、横90cmになります。また8箱を使って机1つ(4箱分)と椅子4つにもなります。箱は813kgの重量に耐えられる(耐圧試験値)ため、親子で寝ても十分な耐久性があります。また、箱をひっくり返せば棚として使用できます。セットの外箱は靴箱になります。仕切り版も付属しています。
ミラクルボックス セットは4つのパーツから成り、全体で14sと持ち運びも用意です。箱8つでベッドになります。箱の裏側は棚になります。セットの外箱を靴箱にすることができます。
ミラクルボックスには、随所に避難所の実態を踏まえた工夫が施されています。段ボールは工具不要で組み立てることができ、8箱すべての組み立て所要時間はおよそ10〜15分ほどです。パーツには設計図が無くても組み立て方が分かるようアルファベットの目印がついています。箱の上の体重がかかる部分にはクッションとなる段ボールの中敷きが備えられています。ベッドとして使用する際に箱どうしを固定するマジックテープ、布団のずれ落ちを防ぐすべり止めシートも付属しています。ミラクルボックスと、段ボールパーテーションD3と合わせて使うことで、住環境とプライバシーの面で避難生活を改善することができます。
眞照はミラクルボックスを10月から、主に災害時の避難所となる施設を管理する自治体や企業向けに販売を開始しました。価格は1セット12,000円(税別・2017年3月までのトライアル価格)です。来年8月末までに3,000セットの販売を計画しており、販売代理店も募集しています。
「自助、共助、公助」という言葉がありますが、大規模災害のときには、共助や公助に期待しても、助けてくれる人がいないという状況になります。眞照の倉吉社長は特に、東海地方の企業・自治体や住民に対して、「もっと危機意識を高めて、まずは自助として備蓄や防災対策に着手してほしい。それを公助、共助につなげてほしい。」と訴えています。倉吉社長は東海地方だけでなく全国で、自治体、地域団体、小中高校で行われる防災研修や避難訓練等への協力を多数行ってきました。眞照は今後、防災教育の専門家をアドバイザーとして迎え、企業、地域団体等を対象に防災研修を開催する予定です。眞照はこのような活動を通して、自助から共助へ繋がる災害備蓄を推進しています。
株式会社眞照 代表取締役 倉吉光盛