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くらたまなぶ
株式会社あそぶとまなぶ代表取締役 [ 仕事術 ]
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くらたまなぶ
[インタビュー]
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MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術/日本経済新聞社(3)
2005.10.23
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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訓練すれば、誰でも ものを開発する仕事はできるのです。
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ブレーンストーミングのコツとは?
【主藤】 本の中ではブレーンストーミングとご紹介してあったと思うんですけども。
【くらた】 だからブレーンストーミングの前段階です。これ通過したらブレーンストーミング上手くなれるよと。ここから入った方がいいよっていう。
【川崎】 ブレーンストーミングって聞くと、難しい感じがしますけど、そういうゲームだとちょっと楽しそうですね。
【くらた】 ブレーンストーミングって、何でもしゃべっていいっていうものですから、一見、簡単だけれども、いざやってみると「何でもしゃべっていいよ」って言われるほど、人間辛いものはないですね。だからその前にそんな何でもと言わずに、「このAというものはAじゃないのをしゃべってご覧」って言うと、これに絞って練習ができるわけですよ。
【川崎】 言いやすいですよね。
【くらた】 ブレーンストーミングだったら、ペットボトルも名刺も何から何まで出てくる。それに対して、“じゃない”こと。“じゃない”ことって、未来に実現するかもしれないってことですから。名刺がメモ帳になる未来もすぐそこに迫っているというですね。
【主藤】 そうですね。
【くらた】 他には、名刺を手裏剣にしてみるとか。
【主藤】 そういうところまでアイデアが広がっていくわけですね。書籍の中では、ラブホテルでブレーンストーミングしようと。
【くらた】 偶然見つけたんですけれどね。ブレーンストーミングをするのにとても良かったんで、何十回とそこでブレーンストーミングをしました。
【主藤】 これは実際に、ラブホテルに行かれたわけですか?
【くらた】 もちろん、そうですよ。
【主藤】 なぜ、ラブホテルに。
【くらた】 実際、ラブホテルだとわかっていたわけじゃなくて、「フロムエー」の時代に編集長と副編集長で、ある年末に一緒に雑誌を作っている方の接待を受けたんです。湯島の料亭さんで。そこは、10階建てぐらいのビルの1階が料亭で、ちょっと不思議じゃないですか。食べながら板さんに「上って何ですか?」って言ったら、声を落として、「いやー、お恥ずかしい。老舗の料亭旅館だったんですが、ご覧なさい。周りがみんなラブホテルになっちゃったんで、食べていくためには単なる旅館じゃ対抗できなくなっちゃったので、ここは料亭ですけども上以降はラブホテルなんです」って。
もちろんブレーンストーミングをするときの8割、9割は普通の会議室でしたが、2割、1割は外に出て、私はその当時はもうありとあらゆる場所で、ブレーンストーミングをしていました。いい会場であるほどブレーンストーミングというのは活性化しますから、場所探しにいつも頭を悩ましていたんで、その話を聞いた途端、「ピーン」っと頭の上に吹き出し、電球が「ピカーン」って光ったような感じでした。「よし、ここを使わせてもらおう」って。
「じゃあ、この料亭以外に上の方でなんかこう、ちょっと8畳とか6畳とか10畳とか座敷みたいなところ、何かありませんか?」って聞いたんです。それぐらいないとブレーンストーミングできませんからね。僕はちゃんと書いていないから勘違いされてしまうんですけど、この本の読者の方は、普通の2人カップル部屋かなんかでブレーンストーミングをやったんじゃないかと思っている人がいっぱいいるんです。それはちょっと僕の文章、言葉足らずだったんですが、板さんが「ありますよ、もちろん元料亭旅館ですから座敷みたいなの、ありますよ」と。
【主藤】 広いところがですね。
【くらた】 ええ。だから、「よし、できる」っていうんで数名のメンバーで泊り込みで1泊2日で何十回ってブレーンストーミングをやりました。そうすると女子女子で部屋に泊まって、男子男子で部屋に泊まって、ブレーンストーミングはその座敷でやりました。なんで活性化したかというと、さっき言っ“○○じゃない”ようなことをずっと延々とやり続けるというのがブレーンストーミングで、上手くいけばいくほど、良い意味でものすごくヘトヘトに疲れるんですよ。もうお互いにジャムセッション、ライブコンサート3時間やったみたいな感じです。
そうなるのがベストなブレーンストーミングで、そうすると3時間でもう止めようということになるので、その湯島のラブホテル会場でも、「じゃあ、休憩しよう」と、休憩したら、窓から下を見るわけですよ。そうすると、「えっ、すごい!くらたさん、あれ見てください。男60代なのに、女子20代じゃないですか。すっげー、現役いいなあ」だとか言って、「バカ、大きい声出したら聞こえるじゃないか」なんて言って、もう休憩時間なのにワクワクワクワクして「また、ブレーンストーミングをやるか」みたいな感じだったんですよ。
普段だったらもうヘトヘトになってるのが、カップルさんにまた元気の素をもらっちゃって「またブレーンストーミングをやろう」ってなって。今の話って、実例で、渋谷とかって若者のラブホテル街なんですけども、湯島ってご年配マーケットなんですよ。これはこれで別の口の仕事には使いませんでしたけど、今でもご活躍されている湯島だと思うんですね。
アイディアを出すポイントは環境設定にあり 【主藤】 今のお話、ブレーンストーミング、アイデアの発想というお話だと思うんですけども、これはラブホテルという非日常の場面でブレーンストーミングをすることに価値があるんですね。
【くらた】 ラブホテルはすごく極端な例ですけれども、通常は普通の会議室使うのが8割ぐらいですよ。
【主藤】 そうですよね。
【くらた】 でもその会議室も通常の決済会議をするような真面目なレイアウトでやると、絶対上手くいきませんから、その長方形の机は一番隅っこに追いやって、カーペットでも下に座ってしまうとか。
【主藤】 もうレイアウト変えちゃって、地べたに座っちゃう。
【くらた】 地べたに車座になってしまうとか。極端に言えば、寝転びながらやってもいいわけで。それぞれの参加者がOKさえすれば、何やってもいいんです。酒入れてもいいし。
【主藤】 ということは、これ、アイデア出す時は環境設定がいかに重要かというお話なわけですね。
【くらた】 その通りです。じゃあ、例えばさっきの“名刺だけど名刺じゃない”というブレーンストーミングは、今このスタジオで、ある意味固い空間の中にいますけれど、この3人でどこか中華料理屋の円卓に行った途端にもっと案は出てきますよ。
そこに見える中華料理屋の道具とかも見ながら、名刺をスプーンにして麻婆豆腐食べてもいいですよねとか、蓮華にも使えるとか。場所を変えただけでも、もう発想が変わっちゃう。沖縄のリゾートホテルでやろうかと言った途端に、もうゆかりちゃんなんか、ウッキウッキしちゃって。
【主藤】 なるほど。今の、このラブホテルのテーマでお話をして頂きましたけども、これから生まれたのが実は「フロムエー」や「エイビーロード」、あと「じゃらん」なんですね。
【くらた】 皆さん、わからないでしょうけど、何か1つのものを創刊する、あるいは創刊した後に特集記事を作るもとは、全部ブレーンストーミング。小さなコラムのアイデアを練るのもブレーンストーミングをやってもいいわけです。
ですから1個のことにプログラムを組むときでも、湯島に十何回のブレーンストーミングをしているわけですよ。「エイビーロード」で十何回も。
【主藤】 そのラブホテルで。
【くらた】 ええ。とても生産性が高いのでね。おととしこの本を書いた時点でリクルートが調べて3個の売り上げ高が450億円という。
【主藤】 450億円!
【くらた】 今、2年経っているから、どうでしょう。500億円を越えているのでは。
【主藤】 そうでしょうね。
【くらた】 だからラブホテルで何かふざけたことをやったと思わないで下さいね、リスナーの方々、みたいなね(笑)。
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