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くらたまなぶ
株式会社あそぶとまなぶ代表取締役 [ 仕事術 ]
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くらたまなぶ
[インタビュー]
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MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術/日本経済新聞社(2)
2005.10.23
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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訓練すれば、誰でも ものを開発する仕事はできるのです。
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カラオケ屋では、マーケットを意識する
【主藤】 それは、先ほどの拍手がもらえないという意味ですね。
【くらた】 「アイラブユー」って終わって、(拍手が)「パン、パン。」こんなのが、5割で17人中、半分。おざなりに、「うまいだろうけど、なに目をつぶっているんだよ、ナルシスト」みたいな人が歌った場合、観客は、「なに騒ぎ放しなんだよ」ってなりますよね。
それで、僕のミッションをやって頑張ってるつもりが50点で(歌い手は)ショックを受けます。だから、(歌い手の部下は)またメニューを見ます。当時だったら、紙ねで今だったらデジタルのね。メニューを一生懸命見ますね。2曲目、3曲目。でも(拍手は)いってせいぜい6割。
【主藤】 それ、拍手の度合いっていうことですね。
【くらた】 これはもう体育会系の鍛錬みたいなものなんで、こちらは何も指導しません。ただ、苦労して。必死になって、「すみません、コツ教えて下さい」って来たら教える。そうしたら「一体今までどうやって選んだ?」とか、「何したの?」聞くと、(歌っている人は)「メニューをこうして選んで、歌っています」って言うんですよ。「それじゃあ、一生かかっても100点取れないんじゃない?」と言うと、「なぜですか?」って(部下が)いってくるんですよ。
それで、「考えてみろよ」とか(僕が)言います。話を縮めますけれども、「周り見てみろよ。あそこの3人組はどういう人?」とか、「あそこは2人、上司と部下の男みたいなのがカラオケスナックなのに、仕事の話で説教ばっかりしているね。あれ、攻略するの、難しいよな」とか。「こっちはなんか学生風かな。いや、でも歳いっている、私服だ、自由業かな」と、こういうことをするんです。つまり、カラオケスナックはマーケットなんですよ。
【主藤】 なるほど。
【くらた】 そのマーケットに17人の不特定なユーザーがいる。そこに自分という送り手が選曲という“商品”を放出する。そして拍手というのが、“買ってくれる、受ける、売れる”という意味で、それで50点取れるということは、マーケットシェアでは5割しか売れない商品ということですね。いわんや、尾崎豊のアイラブユーを顧客も見ないで歌うのかと。
【主藤】 自己満足なんですね。
【くらた】 自己満足の商品、そこらじゅう溢れて誰も買わないじゃないですか。そういうことを体をもって知るんですよ。そうするとすごいショックを受けるし、自信たらたら会議室でユビキタスだとか、ソリューションとかって言っていたのも、カラオケ屋に行った途端、もう鼻へし折られますよ。
それに気が付いたら、一生懸命相手のこと見て、本当だったら聞けばいいわけです。「何ですか?」って。でも実際にカラオケ屋にいくと、他のお客さんは遊んでいるじゃないですか。聞けないでしょう。
【主藤】 聞けませんね。
【くらた】 聞けないからどうやったらウケるか想像して歌って、60点、70点ととって、かろうじて90点、100点となると、ものすごく感激するんですよ。そして職場に戻った時に、その癖がついていますから、今度はどんなテーマ、どんなことをやろうか、どんなマーケティングをしようとしても、直接聞きたくなるんですよ。
「あのカラオケ屋では聞けなかったけども、これは聞いていいんだから」と、聞くようになるんですよ。それを覚えないと、会議室で尾崎豊のアイラブユーを歌うような仕事をしちゃいますよ。
【主藤】 例えば、プレゼンの時でも自己満足のプレゼンで終わってしまうことがありますよね。
【くらた】 目をつぶってパワーポイントでプレゼンテーションをする、みたいなね。
一度覚えると身につく学習方法 【主藤】 今、本当にわかりやすいカラオケという例え話をお聞かせ頂いたんですが、このカラオケは、実は擬似的なマーケットを身近に作り出ししていますよね。だからこそ閉鎖的なカラオケボックスではダメで、不特定多数の人が入るカラオケスナックとか、カラオケバーという所で学びの機会を作るという。
例えばそういう所で鍛える中でも、今、お話があったように、本人が聞いてくるまで教えないというスタンスを取られるわけですね。「こうじゃ、ダメだよ」とかついつい、こう教えたくなることはありませんか?
【くらた】 結局、僕自身が自分で失敗しながら覚えてきて、それでそれをマニュアルや単行本にして、後輩に教えるわけですが、何を教えているかというと、ほとんどは自転車の初乗りとか、鉄棒の逆上がりとか、スキーのボーゲンとか、ボーリングでもゴルフでもいいですよ。今、運動系ばっかりを言ったから、今度はピアノの弾き方、縦笛の吹き方でもいいですよ。
いずれにしろ、体、経験、体験系です。逆上がりは「右ひじをこうして、曲げて」って必死に熱く語っても、何にもならないじゃないですか。だから勘所は言うけども、「やれば」っていうだけですよ。やってみてできなくて「悔しい。」とは思うんです。(教える立場の人間は)「じゃあ、もっとやれば。放課後もやれば」と言うだけで、最後は(逆上がりができて)拍手になるんです。
そのかわり一遍身についたら、それから後、ずーっとできますから。あとは熟練していって、もしかしたら逆上がりから回転までしちゃうかもしれないというね。
一遍覚えちゃえば上に上がるだけであって、もう2度と後戻りはないですよ。そのかわり、机で理屈と言葉だけを言っていると、一見仕事ができたような気がするんだけど、実は何も、一歩も動いていない、その場しのぎの、かっこいい言葉ということです。
【主藤】 今、部下の教育の方法というか、部下にこの仕事をしてもらう。部下がしっかりと働いてくれれば、上司は楽なわけですよね。
こういうお話を、もうちょっとお聞かせ頂きたいと思うんですが、そうやって体で覚えさせるというか、「まずやってみろ」というなかで、部下がやっていますね。なかなかうまくいかない。けれども、本人からアドバイスを求めてくるまでは、「何かやってみたら?」と言わないわけですよね。その間に脱落してしまう、諦めてしまう人もいると思うんですが。
【くらた】 だから職場で言えば、脱落は絶対にないですよ。僕の中にいるんですから。たった今、カラオケの話しかしていませんけど、簡単な、もっと五万とやり方があるんです。すごくいろんなおもしろい、喫茶店で15分でできるようなものもありますし。
今、僕は急に、カラオケを例に出してしまいましたけど、それは一番伝わりやすいからであって、カラオケの前のジョギングみたいなゲームはたくさんあるんです。例えば、“じゃないゲーム”というのがあります。「名刺だけれど名刺じゃない使い方は?はい、言ってみい」っというですね。
【主藤】 名刺だけど名刺じゃない。
【くらた】 名刺だけど名刺じゃない使い方。
【主藤】 名刺じゃない使い方。メモ帳ですね。
【くらた】 はい、いいですよ。それでずっと10、20、30言っていくんですよ。
【主藤】 アイデアを出していくんですか?
【くらた】 アイデアというか、普通にただ、“じゃない”ことを出していくんです。
【主藤】 じゃない”がキーワード。
【くらた】 “じゃないゲーム”。こうやっていくと(頭が)固い人は、10個か12個で止まるんですよ。それで12個で止まったらまたショックを受けるんですが、拍手するとかしないとかさっきのカラオケほどのショックじゃないですよ。僕が「12しか出ないの?」とちょっと突っ込み入れるぐらいで。
次に他の単語で、例えば、「ペットボトルの水だけど、それじゃない使い方は?」と言うと、15、20とか出せるようになります。何度もやっていると、即座に50、60出せるようになりますよ。
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