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秋月昭彦
SE ウェブサイトマネージャー [ キャリア ][ インターネット ]
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秋月昭彦
[インタビュー]
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SEの持つべき「思想」 / すばる舎(3)
2005.12.04
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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社会人、サラリーマンとしての自覚が大切だと思います
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システムを発注するときには長期的な視点をもとう
【主藤】 私はやはり発注側の責任は大きいと思うんですね。なぜかというと、発注側はほとんど勉強していないですよね。勉強していない理由もあって、それは中小企業の社長は特に他の仕事が忙しいからなんですね。
システムがわかる人間に頼むのがベストだろうと、安易に発注してしまうんです。今お話があったように、作り込むなかで、例えば、この部分のモジュールが必要だとか、もう一つワンクッションがこの画面が必要だとか、当初想定していない部分が出てきたりするものですよね。
【秋月】 しますね。
【主藤】 SEの方から、実はこういう事情で、「この機能が要ります」とか、「この機能を実現させるためにはもう一つこういうものを作らなければいけません」あるいは「この画面を作らなければいけません」となると、今度はまた新たに見積もりが発生するわけですよ。
【秋月】 そうですね。
【主藤】 そうすると、発注側としては「話が違うじゃないか」となってくるわけなんですね。ところがSEの立場としては、「社長がおっしゃることを具現化しよう、長期的に使えるシステムにしようとすると、この画面は必須なんですよ」となるわけです。
SEの立場からもそうですし、クライアントの立場に立ってもそれが必須だということで、本当にお金儲け云々ではなくて、SEの方は提案をされているわけなんですが、こちらとしては予算がある。そこで、中途半端な状態のシステムになってしまうというすごいジレンマなんですね。このようなことはよくありますか?
【秋月】 よくありますね。やはり作っていくうちに、こういう仕組みも用意してあげないとお客さんが困っってしまうということもよくあるんです。そうなるとSEとしては、「じゃあ開発費ください」となってしまうんですね。
ただそこで、「開発費を出してくれ」、「出せない」という話になってしまうと、実現できないので、他にあまり重要ではない部分を削って、本当に必要なものを入れていくというような折衝はしていくべきだと思いますし、それでも完璧に実現させたかったら、第1次開発、第2次開発という、もう少し長期のスパンでシステムを見ていくべきだと思うんですね。
システムはどうしても「1回作ったらおしまい」と経営者の方は、思いがちなんですけれども、そうではなくて、システムも世の中の流れに合わせて成長していかなければいけないので、そのための投資は必要なんですね。その投資を見込まないで開発してしまうと、どこかで失敗してしまいます。
昔は「システムを作ったら放ったらかしでいいよ」という話がありましたけれど、今はそうではなくて、牛を育てるようなに、毎日餌を与える感じで、少しずつ機能を改善させたり、新しい機能を作ったりしていかないと2、3年経つともう古いシステムってなってしまいますので。
【主藤】 私も今思うと、始めから全部を発注してしまったんですね。注文を受ける一番最初のところから、最終的には経理処理の部分までを注文したすよ。
【秋月】 それは大変ですね。
【主藤】 とりあえず注文を受けるところだけとか、在庫確認のところだけとか。部分部分を作る作り方の方がいいんですかね。
【秋月】 そうですね。ただ注意して頂きたいのは、その一部分だけを短期的に考えるのではなくて、やはり全体を見て、「いずれはこういうものを作りたい。だけどそのうちのこの部分だけを実現していますよ」というスタンスで開発をしていかないと、パーツパーツでつなげる時にやはりズレが生じてしまうんですね。
全体が100になるところの今10だから、ここの10とここの10をつなげるためのこのモジュールは用意しておきましょうというような状態で開発していくことをお勧めしますね。そこは、本当に開発部隊と依頼する側とがしっかりと意思の疎通をしないとできないんですけど。
【主藤】 発注する社長は、大体わがままで、3ヶ月でこれ全部やって欲しいとか、色々と言うわけですね。
【秋月】 言われますね。でもそれはよくあることで、「3ヶ月でやれ」、「いや半年欲しい」、「じゃあ間とって4ヶ月だ」みたいな話はもう日常茶飯事なので、これはもう仕方ないですね。
セカンドオピニオンを聞く
【主藤】 経営者の立場、発注側の視点でお話をお伺いしたんですけれども、実際にSEとして働いている方の視点で私が興味深かったのは、コミュニケーションの部分ですね。あともう一つやはりSEの方のウィンドウズというシステムへのこだわりがおもしろいと思ったんですね。
【秋月】 ウィンドウズを嫌いな技術者の方って、非常に多いんですね。できればウィンドウズをはずして作りたいと思っている方もいるんですけれども、でもSEは自分の好き嫌いでものを作ってはいけないと私は思っているんですね。
例えば10万円の予算で「こういうシステムが欲しい」と言われたら、ウィンドウズを使ってしまうとその仕組みだけで、10万円を軽く超えてしまうので、フリーのソフトを使って実現すべきなんです。
でも、自分はウィンドウズが好きだから、大事から、「ウィンドウズでないと実現できない」と言ってウィンドウズを入れさせようとすることがよくあるんですね。人によっては「ウィンドウズが好きなので入れたい」「ウィンドウズが嫌いだから入れたくない」と言っているとお客様の要望を汲み取れなくなってしまうので、そこはもう嫌いだったら嫌いでいいんです。
でも勉強はして、勉強した技術を使って仕事をして下さいということですね。仕事と好き嫌いは別なので、そこはやはり別にしなければいけないねということを本で書いているんです。
【主藤】 そうですよね。SEは、職種的にも立場的にもそれだけで権威を持っている、一種先生みたいなところがありますよね。
【秋月】 そういうイメージ、ありますね。
【主藤】 その方が好き嫌いで今のように仕事を受けると、クライアントとしては何か絶対的なものかわからなくなってしまうんですよね。
これからSEの中でも淘汰が始まって、競争が激しくなるということを考えると、今現在、SEとして活躍されている方は、好き嫌いの自分の好みではなく、ユーザーの視点、客観的な立場でシステムをつくっていただきたいと思います。
【秋月】 そうですね。もし「おかしいな」と思ったら別のSEの方に相談する分にはたぶんお金は取られないと思うので、相談して、「本当にこれはウィンドウズでなければいけないのか、オラクルでなければいけないのか」というところは発注側である自分でも疑問を持って見積もりを見て頂きたいと思うんです。
でも、SEの方が「オラクルでないと実現できません」と言ったとしてもふたを開けてみると、「これだけの規模だったら、フリーのデータベースでよかった」ということもよくあるので、セカンドオピニオンを必ず聞いたほうがいいですね。
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