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中川貴之
株式会社アーバンフューネスコーポレーション 代表取締役社長 [ 社長の哲学 ][ 経営 ]
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中川貴之
[インタビュー]
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結婚式と葬儀の「おもてなし」は同じ(1)
2006.11.05
[ TOPBRAIN RADIO ] おもてなしの極意を聴く!
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常に相手の方がどんなことを考え、何を大事にされているかを感じることが非常に大事
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結婚式業界から葬儀業界へ華麗なる転身
川崎 本日のゲストは株式会社アーバンフューネスコーポレーション代表取締役社長の中川貴之さんです。
永田 本日は宜しくお願い致します。
中川 宜しくお願いします。
永田 世でも結構有名なテイクアンド・ギブ・ニーズ社を辞められて、結婚式業界から葬儀業界へ華麗なる転身をされましたが、葬儀業界に転身しようと思ったいきさつをちょっとお聞かせ頂けますか。
中川 はい。やはり結婚式で学んだことが非常に大きなきっかけになっていて、結婚式もそれまではどうしても押し付けだったんですね。結婚式場側やホテル側のお仕着せのウェディングだったものがそうではなく、今度は「結婚したい二人、主役の二人がどんなふうに結婚式をしたいのか」というニーズを我々が提供していったのが成功に導いたんですね。そこでお客様の喜ぶ顔を見ていると、「いろいろなところに実は求められているものを提供していない業界があるのではないかな」と思って、冠婚葬祭ですごく近いところで「お葬式はどうなんだろう」と見たわけですね。そうすると、やはり葬式業界というのはもっと遅れていて、亡くなった方は何も言わないですし、残された方もそんな余裕がないなかで進んでいるので、どうしても通り一辺倒の形になってしまっていたのです。終わった後にいろいろな感想があるのですが、「あっという間に終わっちゃって何が何だかわけがわからなかった」とか、お葬式自体の思い出や感想がないんですね。よくある話で「こんなにかかるとは思わなかった」とか、「次から次へ」という話があったりして、結局はいろいろな問題がそこにあることに気付いて、結婚式でそういうことを学んだので、お葬式でもチャレンジして求められているもの、もしくはまだ求められていないかもしれないけど、これから求められるであろうものを提供していける会社を作っていきたいなと思って、ちょっと始めてしまったんですね。
永田 なるほど。でもやはり今、中川さんがおっしゃっていた結婚式業界も、どちらかというとかつてはホテル一辺倒でしたよね。
川崎 そうでしたね。
永田 ホテルでもパッケージが用意されていて、「そこ、どれにしますか」という感じだったと思うんですね。その部分で、テイクアンド・ギブ・ニーズ社の貢献度はとても高かったですね。それと同時に中川さんは「冠婚葬祭でご近所だった」とおっしゃっても、僕達からしたら華麗なる転身で、全く違うところへ行ってしまった感じがするのですが、今お話を聞いていると確かに規格ばった部分が同じですよね。
中川 そうですね。
永田 僕自身も親族の葬儀の際に、やはり亡くなられた悲しみに浸っている間に全てが決まっていったり、個々の部分の細かい金額がわからなかったり、どちらかというと最終的な見積りを突きつけられて請求書になってしまうみたいなところがあったので、中川さんが考えられたことは、もしかしたら当たり前に思いつかれたのかもしれないですけど、僕達からしたら画期的ですよね。
川崎 そうですよ。私も自分の経験で、車1つにしろ「これはいかかですか」とリンカーンを提示されたら、クラウンではなくてリンカーンを選んでしまったりして。故人のために「イヤ」とは言いたくない状態なので金額が跳ね上がっていきますよね。私もすごくそういう問題がありましたね。
永田 結構両方とも特別な日のシーンですよね。ハレの日なのか、ちょっと寂しい日なのかという違いはありますけど、そこは日本人は非常に弱いですからね。今度は中川さんの会社のことを詳しくお聞きしたいのですが、会社の業績としてはどのような推移をたどっていらっしゃっているのですか。
中川 2002年の10月に設立して9月決算で、最初2人きりで1年半ぐらいやったのですが、売り上げは7800万円で第一期目が終わるんですね。それから第二期目は1億3千万円、第三期目が2億5千万円。今ちょうど第4期目がもうすぐ終わるところですけど、約5億円という感じで、倍々とはいかないですけどそんな感じで。
永田 右肩上がりで。
中川 そうですね。
永田 それだけやはり消費者のニーズがあるということなんでしょうね。
中川 だと思いますね。
永田 やはり上場企業にいらっしゃった方が2名から始めてやっていけるというのが、中川さんのすごさなのかなと思うんですけどね。
亡くなった方のために、残された方のためにどんなお葬式をしたらいいのか
川崎 お葬式をやるにあたってもお客様、相手のことをすごく考えていろいろなことが企画されると思うのですが、中川さんのお仕事を通じての「おもてなしの極意」についておうかがいしていきたいと思います。
永田 結婚式の時と気持ちは同じ部分は多いと思うんですけれども、葬儀のお仕事をやっている時に一番お客様に対して「これがうちの強みなのだ」というおもてなしをちょっとお聞かせ頂けますか。
中川 わかりました。当社の葬儀のスタイルは、もともとある今のお葬式のスタイルとそんなに大きく変わっているわけではないのです。もちろんご遺族の方が望むのであれば、ご住職が来てお経をあげる従来型のお葬式のスタイルをするのですが、実際お葬式は2日間やり、お坊さんがお経をあげる時間はお通夜の時に30分強、告別式の時に30分強ということで2日間で約1時間なんですね。それ以外の時間がたっぷりありますよね。なので、それ以外の時間をどう使っていくかが葬儀社としての存在意義だと思うのです。我々としては亡くなった方のために、残された方のためにどんなお葬式をしたらいいのかということをその時間を使って表現していきたいなと思い、まずその視点で入り表現していくのが我々の葬式のスタイルの特徴の1つになっているのではないかと思っているのです。
永田 具体的にお経でない時間をどう生かされたか、例を1つ挙げてちょっとお聞かせ頂けますか。
中川 一番わかりやすいところで言うと、お祭り好きな旦那さんがいて、突然過労死的に突然亡くなってしまったと。ご家族はご長男が1人の3人家族で非常に悲しみにくれているわけですよね。その時になんとかして立ち直って頂かなければいけないではないですか。お葬式をそのきっかけにしていきたいと思って、短い時間でいろいろな話を聞いたり接しているなかで、これは最後にこうしなくてはいけないというのがあって、全てお葬式の流れが終わった後に「それではご出棺です」と言って扉が開くと、お祭りの太鼓がそこで待ち構えていて、7人ぐらい太鼓衆が並んで「送り太鼓」という太鼓の儀式を演じてもらって。太鼓なのでものすごい迫力で、すごくお腹にドンドン響いてくるんですよ。それを演じてもらってからご主人を送りだしたと。そういうお葬式をさせて頂いたことがあったんです。
川崎 家族は嬉しいですね。
中川 ビックリもされましたけど。我々の特徴でもあるんですけど、それが我々はおもてなしと思って、そういうことを家族に内緒でやるんですね。
川崎 えー、内緒なんですか。
中川 内緒なんですよ。
永田 葬儀の席でサプライズ。
中川 そうなんですよね。 これはちょっと理由があって、皆さんもご身内の方や愛する方を亡くされるとご経験があると思うのですが、その時に前向きな思考が一切停止するんですよね。
永田 そうですよね。
中川 だから本当だったら「こうしてあげたい」、「ああしてあげたい」と後で思うかもしれないし、例えばおじいちゃんが80歳で亡くなったと。お葬式だから悲しいんですけど、まだご健在で80歳の誕生日だったらどんなことを考えるかなと思うと、もっともっといろいろ考えられると思うんですね。ただ状況が状況で、もう一切そんなプラスなことを考えられないので、どちらかというと「もっとああいうふうにしてあげたかったな」、「こうこうしてあげたかったな」と思うんですよね。なので、我々は第三者としてお付き合いしているなかでいろいろなお話を聞いて、何をしてあげなくてはいけないかがわかるわけですよね。それをいちいち「こうしましょう」、「ああしましょう」と言ったところで意味がわからないから、それを汲んで勝手にやってしまうと。
永田 すごいですね。例えばですけど、今のような事例で中川さんの会社のみなさんでおもてなしをされましたと。それによってお客様に伝わった瞬間のお客さんからどんな声があがってきたりするのですか。
中川 やはりまずは驚きますよね。驚かれるのと、「こんなふうに送ってくれて、ありがとう」というお言葉を頂きますね。お葬式が終わった後にも我々がご挨拶に行ったり、その後の手続きのお話をしに行ったりするんですけど、お葬式は何が何だかよくわからないうちに終わりますよね。それで「いい送り方をしてくれて、ありがとう」と感動して下さりますよね。それが2、3日経って少し落ち着いた後に行くと、お葬式で何をしてくれた、例えばお葬式に太鼓してくれたどうのこうの、ということよりも、人のうちのことなのに一生懸命やってくれて、そんなに考えてくれたのが非常に嬉しかったというふうに感動が感謝に変わっているんですね。我々もお付き合いさせて頂いて、人の心はそういうふうに動いていって、おもしろいなというか、ありがたいなというふうに感じたことがありましたね。
永田 僕が経験した身近での葬儀は、後味がよくなかったんですね。寂しいことが起きたうえに、こうしてあげればよかったという後悔の連続だったり、葬儀屋さんに対するちょっとした怒りであったり、というイメージが強かったので、エンターテイメントと言ったら明るいイメージになってしまいますけども、感謝を招ける仕事なんだなというのを今日再確認したというか、発見しましたね。
川崎 ホームページも拝見したんですけど、そういうお客様からの声がたくさん載っていて、一方で担当される方のプロフィールがかなり詳しく写真つきで載っているので、顔が見えるんですよね。やはりすごくそれもおもてなしに通じるものがあるのかなと。
永田 そうですね。本当に結婚式と葬儀は全然見え方が違っても、人間にとって特別な日を送り出すという部分で、やはり中川さんは視点がフラットなんですね。僕だったら結婚式を見ていたら葬儀の方は暗いイメージにしか見えないですから。葬儀屋さんをやっている人が辞めて結婚式をできるかと言ったら難しい話ではないですか。その芯になっているおもてなしの部分が全く変わらないですよね。やはりそこが今、葬儀業界で中川さんが活躍されている一番の決め手のポイントなんではないですかね。
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