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藤沢久美
シンクタンク・ソフィアバンク副代表
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藤沢久美
[インタビュー]
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進化しつつもベースの哲学を守ること(2)
2007.04.15
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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存在するものには全て意義があり、必ず良いものがあるのでそれを見直して活かしましょう
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クレームに微笑む社長さん
高城 あともうひとつ、社長がクレームを聞いたときニコッと微笑むという話なんですが。
川崎 この中で紹介して下さっているクレームをもとに新しい商品がどんどん開発されるお話ですね。すごくびっくりしましたね。
藤沢 それはですね、福井にはすごく小さいモノ作りの会社がいっぱいあるんですけど、みんな下請けなんですね。なので自分達で製品を作る、商品を作るっていう経験がないので何を作ったらいいかわからない。アイディアを考えても思いつかないので、世の中にはクレームはあるわけだからそのクレームを拾っていって改善をすることによって新商品を作ればいいんじゃないか、という発想なんですね。クレーム言うとお金がもらえるという、私達消費者にとってはなんて有難いサービスかしらって。
川崎 お金ももらえるようなシステムが出来ているんですよね。自分の身近な例が書いてあったんですが、それは納豆屋さんのタレの袋がいつもビーッて破けて失敗してたんです。それがある時からドレッシングが入っているような容器に入っていたりタレ用のスペースが新たに出来ていたりして、消費者として「おぉっ!」って感動したのを覚えているんです。
高城 じゃあ納豆で苦労しなくなったわけですね。
川崎 そうなんですよ。その例が書いてあって、それもこういうクレーム処理みたいなものから生まれたのだな、というのをここで初めて知って、すごいシステムだなと感動しました。
高城 本当に手を抜いたクレーム、例えば本当に物が腐っていたとかそういうクレームはもちろんあるんですけど、そうじゃなくてもっと使い勝手を良くするためにこうして欲しいっていう要望がありますよね。いろんなものが混ざっていると思うんですよね。でもその全部含めて社長がニッコリ微笑むっていう、この器の広さは何なんだろうという感じですよね。
川崎 それはある清掃会社さんのお話ですよね。ある時社員の方が清掃していて100万円以上する壷みたいなものを割ってしまったというところから社長さんがそれを壷の下まで拭こうとしたことが素晴らしいという風に社員に伝えられたエピソードが載ってましたね。
藤沢 本当だったらサボっていて掃除がきちんと出来ていなかったので怒られたというのだったら、クレームとして社長が「なにをやってるんだ」って怒らなきゃいけない筈なのに、「よく報告したね」っていうのは。
高城 実際に藤沢さんがお会いになってみて、社長さんは本当に怒らないんですか?
藤沢 怒らないですね。「大変でしょ」って言ったら「歯が磨り減るぐらいの思いだ」っておっしゃってました。けれどもそこで微笑まないと皆が意見を上げてきてくれないし、やっぱり改善が起きない。なのでとにかく聞く、微笑んで聞くことを自分にも課してますとおっしゃってました。
川崎 よくお店にお客様の声のボックスがありますよね。すごく書きたいと思う時があるんですけど、どうせここに入れてもお店の人から上には行かないんだろうなと思って書かなかったことが何度もあるんですけど、やっぱりそういう風に社員に接していられると自分に対してもクレームもちゃんと上に報告するようになるんだろうな、と思いますよね。
藤沢 そうなんです。だからいろんな会社に行って共通で大切だなと思うのはやはり経営者の方々が従業員、そしてお客様、現場の声をどれくらい真摯に聞くか。聞いているということをどうやって皆さんにお伝えするかということに工夫されている会社が強いなと思います。ただ聞いて何でも言う通りにするのとは違うんですよね。なのでこの本の中にもタイトルで「衆知を集めて一人で決める」というコーナーがあるんですけど、やっぱり社長さん方はとにかく全部、まずは受け入れる。でもそれをどう使うか、どう判断するかはご自身の中で決められるという方は多いです。
川崎 社長さんの裁量にも関わってくるんですね。
自分自身の棚卸しをしてみましょう
高城 この本を読ませていただいて思ったんですけど、地方の中小企業の経営者にとってすごくヒントになることが書いてあるので、読んでる方も首都圏だけじゃなくてかなり幅広いような気がしたんですが、本がこれだけ売れていく中で反響はどんな感じでしたか?
藤沢 そうですね。地方のほうが反響がありますね。地方で本当に小さな会社を経営されている方々が勉強会用の本として買って下さるとか。
高城 この本に出てこなかったトピックスで面白い経営者っていうのは当然たくさんあったわけですね。
藤沢 そうなんです。まだいっぱいあるのでまた次書きたいな、という気持ちがあります。
高城 実際に会社としてお会いになった数も500ぐらいあったんですか?
藤沢 はい。今600に近づいている感じです。
高城 まだ引き続き会っているんですか。
藤沢 はい。今私の仕事、半分くらいは社長様のインタビューをすることにしているんですね。なので着々と数が増えているという状態です。
高城 社長様って大企業もありますけど、割と小さい中小企業も全部含めてということですよね。
藤沢 はい。個人商店から大企業の社長まで。最近は政治家の人も含めるようにして、リーダーというテーマで会ってますけど。
高城 リーダーの条件とか成功する条件もだんだんこの本を通じて分かってきますよね。
藤沢 そうですね。今すごく感じているのはやっぱりブレないっていうことが大事なのかな、と思います。もちろん時代の変化に合わせて柔軟に対応はされるんですけど、先程高城さんもおっしゃっていたように「昔から変わっちゃいけないことはある」とおっしゃてた、やっぱり自分が最初に考えた哲学みたいなもの、何かを始めようと思ったときのベースになった哲学はブレない。それをずっと守りながら時代に合わせて変化されている方は強いのかな、と思いますね。
川崎 そのブレない芯みたいなものは皆さんそれぞれ違うんですか?
藤沢 もちろん全然違います。Aという方とBという方は全く正反対だけど、でもブレていないっていう。でも何か共通の理は人間みんな共通だなというところはある気がしますね。
高城 先程地方のお話を聞いたんで最後にここでお聞きしたいんですけど、最近夕張の問題も含めて地方がなかなか元気になれないというのがすごくあると思うんですけど、そういった部分でこれから地方の活性化みたいなところで沢山お会いになって何かヒントはありますか?
藤沢 私は存在するものには全て意義があると思っているんですね。必ず歴史があるところには蓄積があるんですよね。必ず良いものがあるのでそれをもう一度見直すことだと思うんですよ。「もううちの地域は駄目だ」って外から何かを取ってくるんじゃなくて、その地域にどんな素晴らしいものがあるかっていう棚卸しをして、それを今度は使い方を少し見直してみるということだと私はいつも思いますね。必ず良いものはある。
高城 日本でちょっと駄目になると中小企業って外から持ってきて駄目になっちゃいますよね。でもそうじゃなくて、棚卸しすればあると言っていただくとすごい元気になると思いますね。
藤沢 企業とか地域だけじゃなくて人間もそうだと思うんですよ。皆必ず生きてきた分だけ意味がある。そう思います。
高城 まだお聞きしたいことは沢山ありますが、だいぶ時間が迫ってまいりましたので、最後に藤沢さんからリスナーの皆さんに今回の著書を通じてビジネスに活かせるアドバイスがありましたら1つ頂けますか。
藤沢 そうですね。今も申し上げた通り、まずとにかく自分自身何をやってきたのか棚卸ししてみる。皆必ず良いところがあるので自信を持って仕事に人生にそれを活かしていただけたら嬉しいな、と思います。その時にこの本をちらっと読んでいただければ、尚嬉しいと思います。
川崎 はい。本日のゲストは「なぜ、御用聞きビジネスが伸びているのか」の著者、藤沢久美さんでした。
高城 有難うございました。
藤沢 有難うございました。
川崎 有難うございました。
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