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山田真哉
公認会計士 [ 経理・会計 ]
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山田真哉
[インタビュー]
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さおだけ屋はなぜ潰れないのか?/光文社(2)
2005.05.08
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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身の回りのことを数字的に分析する過程は 結構楽しいものなんです。
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1時間に客が1人のラーメン屋が潰れない理由とは?
【主藤】 会計という一見難しい手の届かない分野やイメージとしてあるもので、シリーズを通して身近に感じられるというのが、山田さんの書籍の特徴だと思います。このさおだけ屋について、川崎さんは疑問などありますか?
【川崎】 さおだけ屋さんだけに限らず、街にどうして潰れないんだろうというお店は、必ずみなさんの地域にあると思うんですよね。
【主藤】 なおかつ、会計的な視点からこういうふうな見方をすると、明快にわかるということまで、いろいろ書いてあります。
【山田】 そうですね。会計や数字を使えば、説明は結構簡単です。例えば潰れそうなラーメン屋さんの例を挙げますと、平均したら1時間に1人ぐらいしかお客さんが来ないと思うんですよ。
でも1時間に1人ということは、お店を10時間普通に開けていれば、10人来るわけですよね。ラーメン屋さんというのはチャーハンとか、餃子とか、お酒も頼みますので、一人の平均単価で約千円とします。
千円で10人来ると1万円です。1日1万円ということは、頑張って30日開ければ、30万円入ってくるわけですよね。そう考えていくと、月30万円ならやっていけますよね。
【主藤】 そうですね。潰れずになんとかやっていけます。
【山田】 儲かりはしませんが、大体飲食店の原価率、いわゆる仕入れの値段は大体3割なので、30万稼いで10万出費だったら、20万残ります。
それが持ち家だったらもう十分潰れずにやっていけます。よって1時間1人でもお店は潰れないのです。会計士の視点ですと、そういうのがパパッと浮かびますが、一般の人はもともと考えようとも思わないみたいですね。
【主藤】 そういう数字的な分析をすると、実はおもしろいですね。
【山田】 そこを考える過程に、結構楽しいものがあると思います。
会計学的な発想で全体を捉えよう
【主藤】 私がこの本を読ませて頂いて、おもしろかったというか納得したのが、食器洗い乾燥機の話です。
実は最近、食器洗い乾燥機を買ったのですが、節水金額が必ず書いてありまして。水道代が節約されると、手洗いは実はもったいないんだと思い、「食器洗い乾燥機はいいね」と感じました。しかし、この本を読むと、実は電気代のことが書いてあります。電気代まではさすがに、考えてもみませんでした。
【山田】 会計というと、やはり全体を捉える学問ですので、そういう意味では常に水道代、電気代、ガス代など、いわゆる家計で指標を占めるものは抑える必要があります。
そういう意味では「水道代が安くなる」と言われて、「電気代はどうか」というふうにも考えるのが、会計的には普通の考え方です。
【主藤】 それが会計的な発想なんですね。
【川崎】 主婦に必要ですね。
【主藤】 僕は電器屋さんの従業員の方の説明と、パンフレットとPOPを見て、「水道代がそんなに安くなるのなら・・・」ということで、終わってしまいました。
【川崎】 どうしてそのパンフレットを作るかという過程を思い出してみるとわかりますよね。ネガティブなことは絶対に伝えないけれど、言われないと気が付かないですものね。
【主藤】 気が付かないですよね。そういうふうに会計というのは、経営戦略、商品企画と、非常に密接に関わっていますよね。
【山田】 逆にそういった食器洗い乾燥機を買う、買わないといった身近な問題にも、本当は通用する学問であると思います。
【主藤】 フランス料理の事例が本の中で紹介してありましたが、先ほどお話があったように、あまりお客さんが入っているようには見えず、しかも値段が高いフランス料理は一体何なのかと。
何であそこは潰れず、何年も営業が続いているのかということで、疑問だらけだったんですが、会計という視点で見ていくと、実はそのフランス料理は教室をやっていたわけですね。
【山田】 料理教室や、ソムリエ教室ですね。
【主藤】 フランス料理の営業はそこまで売り上げがなくても、実は他で稼ぐという、これは連結決算、連結の考え方がテーマでした。
例えばその一つを取ってみても、会計を起点にして実は経営を学ぶということではないかと、私は全体を通して感じました。実際、会計士の立場からしていかがでしょうか?
【山田】 経営をやるからには、絶対会計はついてきますし、会計の話をするには絶対経営がついてくるという、ある種、表裏一体な感じだと思います。
そういう意味で、会計を考えると経営というのは、とてもよくわかるでしょう。また、フランス料理店も潰れずにいるという時点で「きっと他に収入源があるんだな」というのは、ピンとくる話ですよね。
【主藤】 そのフランス料理の他の収入源の作り方、その発想は経営者に非常に参考になる考えですよね。
【山田】 そうですね。でもきっと優秀で、天才的な経営者というのは会計とかを学ばずにもうピーンと思いつくんでしょうけど。
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