株式会社あそぶとまなぶ代表取締役
くらたまなぶ
ものを創る仕事は、人の話を聞くことがポイント
東海最前線
東海地方の先端的な試み、ユニークな商品・サービス、意義のある取り組みなどを紹介
短期間で成功を勝ち取るために
ビジネスとプライベートを
両立させた女性になるために
ワンランク上のステージで
活躍するために
問題解決をすばやくするために
国際力を身につけるために
ビジネスを円滑にするコツとは
コミュニケーションが
上手になるために
人の上に立つ時に必要な考えは
心身ともに美しくなるには
感性豊かな毎日を送るには
運営:
株式会社コミュニケーションデザイン
Home
>
HKM-日商快訊-
>
コラム
> 中国の法律Q&A「労働契約締結をめぐる罰則規定について3」
HKM-日商快訊-
[ 中国 ]
HKM-日商快訊-
[コラム]
中国の法律Q&A「労働契約締結をめぐる罰則規定について3」
2012.06.07
中国でビジネスを行なうには、中国の基本的な法律を知っておく必要があります。このコラムでは、現地日系企業の事情に詳しい中国人弁護士による、法律基礎知識を掲載。日系企業が巻き込まれやすい事件や、日系企業の業務に関連する法律について解説していきます。
中国の『労働契約法』には、労働者と一定期間後に雇用契約を結ばなかった場合に雇用者に罰則を科す規定があります。ただ、労働者が締結を拒否した場合などでの明確な基準がなく、裁判所の判決はまちまちです。このような場合で発生するリスク回避のため、実際に起きた契約締結を巡る労働争議をご紹介します。
最終回の今回は、上海で争われたケースで、雇用契約未締結にともなう賠償を求める従業員が敗訴した案件を取り上げます。判決のカギとなったのは「誠実協議の義務」でした。
会社側が提出した証拠
原告の沈は2008年10月から10年2月の間、上海の某製造工場に勤務していましたが、在職中に書面で雇用契約を結びませんでした。10年2月に沈は辞職。同年5月に労働仲裁を申請し、労働関連法規が定める契約未締結にともなう2倍の賃金(約2万5千元)の支払いを会社側に求める訴えを起こました。裁判で会社側は、沈が契約締結を拒んだことを証明する以下の証拠を提出しました。
@沈の雇用契約。署名捺印の欄に「締結を望まず、自ら放棄する」との字句と沈の署名あり。
A他の従業員が会社と結んだ雇用契約8件。
B人事担当の証言。証言によると、人事担当は何度も沈の作業場に行って契約を結ぼうとしたが、沈は離職時に面倒だとして拒否。
C会計担当の証言。証言によると、沈に契約締結を迫るため、賃金支給を一時的に差し止めるよう人事担当から要求があった。人事担当と作業場へ行き沈に契約締結を求めたことも証言。
「誠実協議の義務」
判決に際して裁判所はまず、
雇用契約の締結において誠実信用原則を順守する必要がある点を強調
しました。そのうえで、未締結の場合に雇用者は「誠実協議の義務」を果たしたか、また労働者が締結を拒否するなどの状況があったのかを考慮するとしました。
雇用者が「誠実協議の義務」を果たしており、雇用者にかかわりのない原因で契約が結ばれなかった場合、『労働契約法実施条例』第6条の「労働者と書面の雇用契約を締結していない」状況には該当せず、雇用者は労働者に2倍の賃金を支払う必要はないとしました。
このケースでは、会社が提出した証拠から、会社は従業員との契約締結を十分に重視しており、会社側に契約締結を拒む故意はないとの判断を示しました。
雇用期間中に会社が沈の出勤状況の管理や定期の賃金支給、沈の商業保険加入などを行なった事実も考慮し、契約締結に向けた「誠実協議の義務」を会社は果たしていたとして、沈の訴えを棄却したのです。
証拠収集と通知が大切
このケースが示すように、雇用契約の締結では、労使双方に誠実な対応が求められます。もっとも、労働者が契約締結を拒み、雇用者が労働者に雇用関係の終了を書面で通知せず雇用契約の関係を続けた場合の法律上の責任について定めた規定が現行法になく、裁判所によって判決が異なっているのが現状です。
このため、雇用契約にからむ労働争議の予防策として、
労働者が契約締結を拒否した場合、直ちにその事実を証明する証拠を集めておく
ことをお勧めします。同時に「採用日から1か月超1年未満」または「有期雇用契約の期間満了日から1か月内」に、
明確に書面で雇用関係の終了を従業員に通知する
ことが必要です。
<筆者>
李萍清:弁護士。武漢大学外国語学部日本語学科、中国人民大学大学院法学部経済法卒。深圳市律師協会所属。日系企業を対象に、労務や人事、貿易業務、投資などの法務コンサルティングを担当。広州・深圳・上海・北京に事業拠点をもつ東方KUNLUN律師事務所に勤務。
■ 他のコラムを読む
「HKM-日商快訊- E-mail版120229<最新号のお知らせ>」2012.03.07
「メイド・バイ・ジャパン in チャイナを中国で売る! 中国産業スペシャリスト4人の日系企業の内販への提言」2012.03.09
HKM-日商快訊- のコラム一覧へ
Copyright (C) 2013 TOP BRAIN, All Rights Reserved.