VIEストラクチャーとは 中国国内にて外資系企業が参入できない規制業種が、海外にて株式公開(IPO)や持分譲渡を行なう際に使用されるスキームとして、VIEストラクチャー(協議支配/VIE:Variable Interest Entity)があります。今回はVIEストラクチャーの仕組みと利用方法について簡単にご紹介します。
【土豆網の例】 まずは、動画配信の土豆網がVIEストラクチャーを使い、NASDAQへの上場を果たした実例を見てみましょう。
土豆網は上海で登録されている中国内資企業ですが、中国国内の株式市場に株式公開するための条件を満たしていないため、海外の株式市場を目指しました。しかし、土豆網は規制業種であるため外国資本は参入できず、そのため海外にて上場することは(土豆網が外国資本と扱われてしまうことになるため)事実上不可能でした。その点を解決するために利用されたのがVIEストラクチャーです。
土豆網に関する公開情報によると、主要株主はまずケイマン諸島に土豆ホールディングスという会社を設立し、次に土豆ホールディングスを利用してNASDAQに上場しています。土豆網と土豆ホールディングスは事実上資本関係がありませんが、土豆ホールディングスは中国国内にサービス会社を設立し、この会社と土豆網がサービス契約などを締結して利益を吸い上げています。土豆ホールディングスは利益を吸い上げる仕組みがあり、また土豆網が完全に土豆ホールディングスのコントロール下にあることを証明し、上場を果たしました。
VIEストラクチャーのポイント VIEストラクチャーで重要なポイントは、外国企業が中国企業を契約で拘束し、完全にコントロール下におくことです。そのため、日系企業がこの制度を利用して、中国の規制業種へ進出しているケースも散見されます。
よくあるパターンとしては、日系企業に勤める中国人スタッフの名義を使い、中国国内に内資企業を設立し、その企業に規制業種の営業を申請させると同時に内資企業を契約で拘束することで、実質日系企業として運営する方法です。この場合、日系企業と中国人スタッフ個人、あるいは中国内資企業との関係が非常に重要となります。
というのも、それまでは持分の譲渡制限契約などを締結できましたが、同スキームは外国資本からの支配と同様の意味合いであるため、現在では中国政府(工商局管轄)が譲渡制限を認めることは実務上困難です。そのため、ひとたび中国人スタッフとの関係がこじれると、これまでの投資がすべて無駄になる可能性も考えられます。
同ストラクチャーはあくまで独立企業間での契約がベースになっていますが、その上にはさらに信頼関係等により構成されていることを忘れてはなりません。
なお、今後VIEストラクチャーにて中国企業が国外での株式公開を行なう場合、商務部と証券監督管理委員会の認可が必要となる可能性があります(未定)。ただし、外国企業がこのストラクチャーで中国に入り込むことに対しての規制は今のところ存在しないため、中国でのビジネス展開に際しては、方法の一つとして考えたいところです。
弊社でも中国進出時の投資ストラクチャーに関するアドバイザリーを行なっておりますので、まずはご相談ください。
<筆者>
❖鈴木由生(
青葉ビジネスコンサルティング・中国アドバイザリー部副部長)/長崎出身、長崎大学経済学部卒。2006年より現職。広州拠点において主に加工貿易や投資ストラクチャーに関するアドバイスを行なう。週末はラグビー。