世界の小売が中国に 若者を中心とした人気のあるリテイルショップの中国進出は盛んであり、各社ともまず首都の北京に進出し、知名度アップを狙う。同時に、最大の消費市場である上海に旗艦店を置く戦略である。さらに香港にも進出し、華南ビジネスの足がかりを作る。下表は世界的ブランドチェーンの中国進出店舗数である。
しかし、華南の中心・広州、所得水準の高い深圳への出店は遅く、店舗も少ない。広東人の衣料・ファッションセンスの遅れや香港に近いということが、背景にあるものと思われる。
このなかでは日本のユニクロの積極さが目立つ。中国ではすでに116店舗を展開しているが、海外店舗291店のうち約4割が中国である。2011年のユニクロの海外営業額は937億円であったが、うち中国(香港を含む)は404億円に上っており、43%を占め、稼ぎ頭になっている。
H&Mの香港を含む中国での売り上げは89店舗で404億円。ユニクロの半分ではあるが、海外2500店舗のなかでも上位に位置している。ZARAとH&Mの中国展開はほぼ似ており、香港ではともに7店舗。今後、ショピングセンターの発展とともに、そこに入居するパターンを展開していくであろう。
欧州の2社に対し、米国GAPの中国進出は慎重だ。香港でも現在のところわずか2店舗で、本土でも北京、上海に限られている。
沿海都市から内陸へ 欧米系が広州など華南への進出に消極的なのに対し、ユニクロは広州、深圳への進出も積極的に行なっており、今後は欧米系も徐々に拡大していくであろう。
さらに、小売業の中国展開は北京、上海など沿海の1級都市から、2級、3級都市、つまり内陸省都や商業都市にシフトしつつある。
重慶にはユニクロがすでに進出しており、成都においても、伊勢丹やジャスコの進出によって、そのテナントとして入居している。両都市にはZARAも進出しており、今後、省都や商業都市での進出合戦に火がつくものと思われる。
衣料ブランド店以外では、L’OCCITANE、Crabtree & Evelynなど自然派化粧品トップの香港出店が加速しており、同時に本土への出店も始まろうとしている。
L’OCCITANEの香港22店舗の11年の売り上げは2147万ユーロ(約21億円)で、香港の安売り化粧品量販店Sasaの490億円とは大きな差があるものの、単価を考慮すると極めて意味ある数値といえる。
Crabtree & Evelynは店舗数でL’OCCITANEを上回っており、大陸旅行者の人気も高いことから、今後、中国への店舗展開をより積極的に行なっていくものと思われる。