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HKM-日商快訊-
[ 中国 ]
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チャイナマネジメントを成功へと導く 中国ビジネス羅針盤 中国の高齢者向け市場
2013.06.12
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高齢化と少子化 中国高齢者工作委員会が発表した最新データに拠れば、2011年末時点で、中国における60歳以上の高齢者人口は1・85億人となり、全人口の13・7%を占めています。今後、中国の高齢者人口は13年に2億人を超え、33年には4億人に倍増、50年には4.7億人、全国人口の3分の1に達すると予想されています。
中国における高齢者人口の増加ペースは年間あたり1000万人となり、これは世界で最も速いスピードです。一方、中国の出生率は1990年代以降は人口の置換水準(現有人口を維持できる出生率)を下回る水準で推移しています。
90―95年の出生率はすでに2・01に低下し、00年以降は1・77前後で推移しています。予想では、15―20年には1・84、25―30年以降は1・85となります。
日本の出生率1・39(2010年)に比べればまだまだ高い印象を受けますが、これはあくまで全国平均値。例えば上海では0・71(11年)まで低下しており、その他沿海都市はいずれも平均よりはるかに低い水準で推移しています。
いずれにせよ、置換水準を下回る出生率によりもたらされるのは少子化、そして将来的な生産年齢人口と総人口の減少です。上記少子高齢化の結果として、中国の人口ボーナス(15―64歳の生産年齢人口が、それ以外の人口〈従属人口〉の2倍以上ある状態)は15年頃に終了し、総人口自体も50年頃をピークに減少に転じると予測されています。
高齢者向け市場の拡大 上記のような高齢化、少子化を受けて、今後は若者向けから壮年、高齢者向けマーケットが拡大することが予想されます。
例えば、国家経済計画である『中国老齢事業発展第12次5カ年計画』においては、60歳及びそれ以上の高齢者千人当たりの養護施設ベッド数を2010年の17床から30床にまで増設させることが謳われています。
中国は世界で唯一、高齢者人口が1億人を超える国ですが、その一方で上記のように中国国内の高齢者向けサービスはまだ少ないのが現状です。2015年における中国老齢者介護サービスの潜在市場価値は4500億元、老齢者介護サービス関連の人材ニーズは500万人を超えると予想されています。
外商企業として中国で投資可能な業界は、国家発展・改革委員会及び商務部より公布された『外商投資指導目録』によって定められますが、老人介護施設は奨励類に該当するため、外資による参入も十分可能です。また、高齢者層がサービスを利用するためには老後資金が必要ですが、公的年金制度の漸進的な整備によって、その点も次第に好転しつつあります。
中国の年金制度は大きく分けて公務員年金、企業年金、都市部住民社会年金、新型農村社会年金の4種から成りますが、現在、企業年金はおよそ1500元/月程度、公務員年金ではその数倍が支給されています。老人介護施設の月間利用料金はおよそ1600―3000元程度ですので、ある程度の蓄え、そして子供からの仕送りがあれば利用は可能でしょう。
もちろん年金制度の恩恵からこぼれ落ちた貧困層も依然多いですが、一方である程度の余裕がある層も増えつつあります。加えて親孝行を美徳とする文化もあるため、高齢者向けマーケットのポテンシャルは高いと考えられます。
高齢化社会の先輩である日本から提供できるサービスやノウハウは少なくないのではないでしょうか。
ナビゲーター 青葉ビジネス・コンサルティング 上原尚大(シニアコンサルタント) ❖うえはら・しょうた/東京出身。東京大学大学院修了。大手食品メーカー、広告会社の人事を経て現職。広州にて中国法務アドバイザリーに従事。専門は人事労務。趣味は食べ歩き。
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