中国本土の工場人件費コストの上昇や、政情不安の影響で、タイやベトナム、インドネシアなどの東南アジア地域にシフトする日系製造業が増えている。
また中国本土において、 60歳を超える外国人に対する就労ビザの発給規制も求職者に影響している。こうした就労ビザの規制は、ビザの取得がそれほど厳しくない東南アジア就職にシフトする動きの要因にもなっている。それに伴い東南アジアでの海外就職も増加傾向にある
例えば、大手プリンターメーカーのセイコーエプソンは、広東省深圳工場の生産能力を減らし、向こう 3~5年内にインドネシアのプリンター生産を7割増と発表。玩具のタカラトミーは中国での人件費の上昇や為替リスクの高まりなどを考慮し、海外生産体制をタイやベトナムなどにシフトしている。
これは今年(2013年)に入り、中国広東省の労工の最低賃金が 1人当たり 1600人民元(約2万4000円)に引き上げられたことや、工員による大規模賃上げストライキが 頻発したことなどが要因に挙げられる。かつては700人民元(約 9000円)前後だった時代から 比べると、2倍以上の人件費の高騰である。
そうした人件費高騰の影響によって、当初はアパレル業界で加速していた中国本土以外の生産拠点確保の動きが、現在ではさまざまな業界でも広がりつつある。マブチモーター、リコー、京セラミタ、ブラザー工業などの完成品メーカーなども、すでに一部生産能力を東南アジアにシフトすることを進めており、大手電子部品メーカーもこれに続いている。
チャイナ・プラス・ワンで東南アジアシフトした日系製造業からの求人が増加いているのである。最近では中国勤務希望だった人材も、東南アジアも追加で希望される傾向も目立ってきている。
松本博明 まつもと・ひろあき/人材総合サービスパソナを退社後ZZZ年単身来港。Asian Success社を経て、2005年Career Integration Asia Co.,Ltd. 設立(2010 年Career Integration Co.,Ltd.に社名変更)。本連載へのご意見ご要望は、E-MAIL:info@kananworks.comまで。