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HKM-日商快訊-
[ 中国 ]
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中国会計税務の気になる動向 ストックオプションへの課税
2013.11.15
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中国でめまぐるしく変わる税法について、日系企業のみなさまが理解し、中国でのビジネスがスムーズに遂行できるよう、わかりやすく解説させていただきます。
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はじめに 最近、中国子会社の取締役に対して、日本親会社のストックオプションを付与する事例が増えています。
中国子会社の重要性が増すなか、有力な中国人管理職のモチベーションを向上させることが目的として考えられます。
日本において勤務経験のない中国の居住者(甲)が日本法人(A社)のストックオプションを行使し、その後取得したA社株式を市場において譲渡しました。甲の行使価額、権利行使時のA社株式の時価および譲渡時のA社株式の時価はそれぞれ100、150、180であったと仮定します。A社のストックオプションは我が国の税制上の適格要件を満たしています。
権利行使時の課税関係 (1)日本において 適格ストックオプションの場合、甲が得た付与から権利行使までの経済的利益については日本に課税権が認められていないため(日中租税条約第15条第1項)、個人の所得税は課税されません(措法29の2)。
(2)中国において 行使時のA社株式の時価と行使価額の差額は、甲の給与所得として3%〜45%の所得税が課税されます(財税[2005]35号)。ただし、当該ストックオプションの行使が一定の要件 を満たしていれば、甲の給与所得対して優遇税率の20%が適用されます(国税函[2009]461号)。
●中国の所得税額=給与所得(150−100)× 税率20% = 10
譲渡時の課税関係 (1)日本において 甲 が適格ストックオプションの行使により取得した株式を譲渡した場合、権利行使後に生じた株式譲渡益部分については、株式等の譲渡に係る国内源泉所得として、他の所得と分離して申告しなければなりません(措法37の12、所令291@三、措令19の3M、日中租税条約第13条)。よって、譲渡価額と行使価額の差額に15%に相当する所得税を申告・納付しなければなりません。
●日本の所得税額=譲渡所得(180−150)× 税率15% = 4.5
(2)中国において 甲はA社株式を譲渡した場合、その譲渡価額と取得価額の差額を資産譲渡所得として、他の所得と分離して、20%に相当する所得税を申告・納付しなければなりません(財税[2005]35号)。その際、日本で納付した所得税について、外国税額控除 を適用するとします。
●中国の所得税額=譲渡所得(180−150)× 税率20% = 6 外国税額控除▲4.5 納付税額1.5
中国の所得税は、所得の種類によってそれぞれ分離課税となっているため、納税者は毎月各種所得にかかる税金を申告し、それに対応する外国税金の控除を受けます。日本の確定申告制度のように所得の総合計算を行わないため、譲渡所得にかかる外国税金を給与所得から控除することができません。
中国の居住者は外国法人のストックオプションを行使する際には、所轄の外貨管理局にて事前登記をし、専用口座を開設する必要があります。また、行使および譲渡による金銭の収受も当該専用口座を介さなければなりません。お見逃しなく!
※中国子会社の株式の30%以上が上場会社によって保有され、かつ、中国子会社による中国の税務当局への登録が要件です。日本では、自社の取締役等でなくても、50%以上保有子会社の取締役等に付与したストックオプションも適格とされます ※甲は日本に恒久的施設を有しないと仮定します。 ※平成25年1月1日より復興特別税2.1%が課されるため、15%×2.1%=15.315%となりますが、ここでは説明を省略しています。 ※基礎控除などの控除額を考慮しないものとします。 ※日本の所得税確定時期によっては外国税額控除が適用できない場合があります。
<筆者> 山口 和貴/日本公認会計士。大手監査法人にて法定監査業務、株式公開(IPO)業務、IFRSアドバイザリー業務など、会計税務に関する全般的なアドバイザリー業務の経験を持つ。グラント・ソントン中国 日本デスクのシニアマネージャーとして、中国・香港進出企業に対して様々なサービスを提供している。 本コラムへのご意見・ご要望は、E-MAIL: k.yamaguchi@cn.gt.com まで。
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