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久恒啓一
宮城大学事業構想学部教授 [ 仕事術 ]
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久恒啓一
[インタビュー]
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図で考える人は仕事ができる/日本経済新聞社(2)
2005.07.03
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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常に世の中と株価市場が繋がっていると 考えるといいと思います。
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文章よりも図のほうが説得力がある
【主藤】 図で考えた方が実は秀才を上回る、秀才に強いということを発見されてから出版までの経緯を教えてください。
【久垣】 大学を出て何年か経ったら、いろんな企業や行政で講演を頼まれたりします。そうしますと、共通して企業の人事担当者が悩んでいることがあります。
それは「わが社には考える社員がいない」ということです。これはものすごく儲かっている企業も同じで、社長だけが一流、あとは部長以下の大企業病だそうです。企業も考える社員がいないので、危機感を持っているんですね。これが1つです。
それから私はずっと前から図についてプレゼンテーションや伝えるという面が非常に強くて、そういう関心が皆さん非常に高かったんです。ところが日本経済新聞の編集者が来まして「図というのは考えることが本質ですよね。そこに焦点を当てた本をまだ書いていないんじゃないですか?」と言われたんですよ。その通りでした。
そこで、真剣にちゃんと本を書くことになりました。文章と言うのは説得型です。相手の考えていることをそのまま読まされるのは、不愉快なものでしょう。しかし図は納得型なので自ら考えることにつながります。だから図を見せてもらっても、ここはこうなっていると自分で考えます。だから説明しなくても相手が勝手に納得してくれるので、非常に関係がよくなるんですね。
【主藤】 そうすると、図はいわゆる大意を伝えて、相手の判断に委ねる部分が多い分、実は説得力も増しているということですね。
【久垣】 そうです。結局セールスマンでも、よく売れるセールスマンはしゃべらなくても売れるんですね。よくしゃべる人はこいつからは絶対に買いたくないと嫌になります。
【川崎】 そういう時あります。
【久垣】 逆に、大丈夫かなと思う人からは買いたくなります。
そういうのと同じで、相手自身が納得したら買ってくれるわけです。そういう意味でも営業や上司との関係もそうですよね。私は若い頃は説得型の部下だったので、よく上司と喧嘩していましたよ。やっと説得したら、ハンコが逆さまに押してあったりと今になってあの時の説得型を反省しています。
【主藤】 なるほど。そのハンコが逆さまというのは、ささやかな上司の抵抗ですね。
【久垣】 そうです。
自分で考えたオリジナルにこだわる理由
【主藤】 実践の場ですと、やはり文章での説得になってしまいますか?
【久垣】 文章はやはり借り物の文章が多いじゃないですか?
それから文章最大の特徴は、自分がわかっていなくても書けるというんですよ。主藤さんも本を書いているからわかると思うけど、自分の意見がはっきりしていなくても書けませんか?
【主藤】 なるほど。経験に基づいて書くところがもちろんベースにはなっていますけど、引用とか参考文献もあります。逆にいうと、引用でもやろうと思えばできるかもしれません。
【久垣】 学者の書いた論文は引用だらけですよ。引用だらけということは、本人の意見がないんですよね。僕は本来、引用はしない方がいいと思っています。だって自分の意見を言う場であって、他人の意見の紹介するために論文を書くのは本来おかしいですからね。
ちなみに僕の先生の梅棹忠夫先生が書いた本には、引用がありません。先生に理由を聞いたら、人が言ったことはもう言う必要ないから、自分はオリジナルしか言わないつもりだそうです。これは素晴らしいと思い、僕もそういうことを目指しているんですよ。
【主藤】 それが構想力や発想力につながったんですね。
【久垣】 今、日本の病は人の真似をすることです。真似をするということは、みんな同じなんでオリジナリティがないわけです。これは行政も民間も教育も全部そうでしょう。例えばラジオの企画も大体パクリあっている状態ですよね。だから新しい構想を立てる時は、やはり自分で考えたものでないとダメなんじゃないかと思います。
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