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久恒啓一
宮城大学事業構想学部教授 [ 仕事術 ]
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久恒啓一
[インタビュー]
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図で考える人は仕事ができる/日本経済新聞社(3)
2005.07.03
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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常に世の中と株価市場が繋がっていると 考えるといいと思います。
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文章や箇条書きに対する読者の反応
【主藤】 読者の方からはどういった反響がありましたか?
【久垣】 まず、この本で文章至上主義を打倒しようといっています。
文章が最高だというのは非常におかしなことで、通常会社の中で行われていることは何かといいますと、例えば‘てにをは’を直すのが上司の仕事になっています。
本質的な議論がほとんどありません。1時間の会議でも50分は「大体この意味は何という意味か?」と確認し合っていますよね。あとの10分間で本質論に入るわけだけれども時間がないので会議が通ったことになるわけでしょう。
1つは行政、銀行、大きな企業の本社もみんな文章中心主義になっていて、その愚かさに共感したという人が多かったということです。
もう1つは、僕は箇条書きを本の中で非常に批判しているんです。これは私の大発見だと実は思っていて、箇条書きというのは、1、2、3と並べますよね。どういうことかというと、まず大きさを説明することができない。8対1対1の場合もあるでしょう。
【川崎】 できないですね。
【久垣】 それから1の項目と2の項目が重なっている可能性もありますよね。これも説明できません。それから3番目から1番目に因果関係があるとしても、説明できません。
つまり箇条書きで書いても、内容をうまく伝えたことになりません。それ以前に箇条書きで考えていた者が、内容をわかっていない可能性が大いにあります。
したがって箇条書きで書いたものを本人がわかっていなければ、現場もわからず社内が混乱します。これは結構、反響が多かったですね。
図は個性を表現する手段! 【主藤】 本の中には他にも、「図解には個性が表れる」「頭ではなく手で考える」とか、図にまつわる話がいっぱい書いてありますね。
【久垣】 私達が生きているということは、表現しているわけで、自己表現の連続なんですね。このときに文章で表現をする、文章で個性を出せますか?相当な苦労をしないとできませんよね。ビジネスや音楽も難しいはずです。 そうすると、個性が表現できる方法はあまりないんですよ。ところが、図はある簡単な訓練だけで誰でも書けるようになります。その時に、その図に没頭する人が多いんですよ。
なぜこの本が売れて、どんどん続々と本が出ているかというと、それは個性の出る表現法にあたったからです。要するに、自分らしい新しい図ができるわけです。自分の個性が出るような表現方法というのは、なかなかないので、みんな夢中になるんですね。学生なんか、特に夢中になります。そうするとどうなるかというと、授業に疲れるんです。なぜ疲れるかというと、頭がフル回転するので、終わった後ぐったりなるせいでしょう。頭がフル回転したということ、皆さん経験ありますか?
【川崎】 ここ最近ないですよね。
【久垣】 切羽詰まった時以外ありません。それからもう1つ、「頭で考えろ」と言われてきことは無理です。なぜかというと、例えば今ここでスタジオにいる人に目をつぶって「10分間あげるから、あるテーマで考えて下さい」と僕が言いますよね。そうすると10分後どうなっているかというと、おそらく4人だったら3人は寝ています。あとの1人は頭の中が妄想だらけになっています。
つまり頭の中で考えるということはできないんです。星雲状態でぐちゃぐちゃになっているでしょう。今あなたが考えていることそのまま出したら、世の中生きていけなくなると思いませんか?
【主藤】 そうですね。ところで久恒先生は頭ではなく手で考えるということですが、手を動かすことによって、実は頭の中が回転し始めるのですか?
【久垣】 やってみるとわかりますが、図を書いているうちに、頭が自動的に動いていくという感じがします。例でいうとマウスを動かすと画面が動くのに近いです。他にも丸と三角が2つあるとしますよね。これが丸を大きくしたらどうなるかとか、丸と丸が重なったら何が見えるかとか、ということを自動的に思い浮べるんです。だから手を動かすことによって、実は頭が動いているということです。
最近、声を出せば頭がまわるとか、いろいろいわれていますよね。例えばヨーロッパの作家はみんな散歩しますし、シャーロックホームズも家の中を歩きました。歩くことによって、脳が活性化しているわけです。我々、座っている時は頭が動いていません。だから頭で考えるほど、人間は高級じゃないということです。手を動かし、体を動かし、旅行することによっていろんなことを考えますよね。
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