□ビジネスパーソンに知ってほしい「続ける三原則」――――日本のビジネスパーソンは資格というものに大変興味を持つ人が多いですよね。その場合、資格をとるという目的の達成というよりは、そのための勉強を続けるにはどうすればいいかという話がよくされますが、ビジネスパーソンが仕事や自分の能力を高めるために勉強を続けるためのヒントを、あえて幾つかに絞るとしたら、どのようなものでしょうか?
1つはよく言われますが必ず目標設定を、つまりいつまでにやるのかそのラストゴールを決めておくということ。あとスモールゴールの設定を幾つも用意しておくということですね。例えば2年後に何かの資格を取りたいなら、毎月とか2ヶ月に1回毎のスモールゴールを必ず決めておくんです。ほとんどの方がラストゴールだけを見ているから、ちょっとやってみてすぐ「できない」となる。0か100しかないんですよ。――――すると、折れてしまうと?
折れてしまいますよね。だからスモールゴールを沢山設定しておくといいでしょう。
それから2つめは、メジャーメントを必ずしておく。もちろん成績というのでもいいですが、それよりも例えば学習時間を1日30分ならと決めて、その積み重ねを目に見えるような形でグラフ化しておく、といったものを1つ用意しておくといいんです。
3つめは、サポーターを必ず用意するということですね。――――サポーターですか
資格試験を受ける方というのは、ほとんどの方が1人でずっと勉強していたり、逆に言うと「この資格を取ってみんなを驚かしてやろう」と思ってしまう。しかしそうではなくて、いわゆるサポーターを沢山用意しておいて、みんなに公表してしまうほうがいい。僕の友人には、ミクシィやブログで公表している人が沢山います。ダイエットや資格試験を目指している人たちですが、いつまでに目指しているか、今日の学習時間は30分とか、毎日毎日書き続ける。
それからは彼女だとかお嫁さんにサポーターになってもらって、例えば1週間学習を続けたときなどに褒めてもらう。逆にあらかじめ5万円ぐらいお小遣いから渡しておいて、「1週間続かなかったら没収してくれ」と言っておく。そうすれば誰でも続きますよね。――――メジャーメントのお話が出ましたが、その“メジャー”が、大きすぎたり大変すぎると逆効果ではないでしょうか。その設定は難しいですよね。
そうですね。だから、スモールゴールを沢山作っておくことが必要です。成績よりも学習時間といったものから入ってもらったほうが、最初はやりやすいと思います。ダイエットでもそうですが、5キロ落とすという場合、1キロ落ちたらメジャーメントとなるとそれは難しいんですよ。そうではなくて、1日1キロ走ったらそれだけで花丸1つと考えて、それを目に見える形で残しておくと、続けることができますよ。――――続けるとなると、ものすごいプレッシャーを感じる方が多いと思います。ですからときにはそれが悲壮感といいますか、自分で自分を追い詰めてしまう人が多いと思うのですが。
そういう人は、つまり0か100かしかないんでしょうね。でも完全にうまくいくか、もう諦めてしまうか、その2択しかないと考えるのではなくて、本当に気楽な気持ちで少しずつ少しずつ進めることが一番いい。ダイエットでもそうですが、3日やって1日休む、でもいいと思うんです。続けていけば成果が必ず表れてくると思いますから。□続ける確率を格段に上げる“重要アイテム”とは?――――この本を読まれた方からいろんな反応があったかと思いますが、「続けることができた」といった実際の報告は届きましたか?
ダイエットだとか資格試験の成功例は沢山届きます。「継続できている」といった報告もありますね。他にはブログを書き続けるのを実践していて、報告をくださった人もいました。当初、読者対象は男性が多いとみていましたが、女性が読んでくださっているケースも非常に多いんです。女性誌からの取材もかなり受けました。整理整頓をどう続けるか、とか多いですね。意外なほどいろんな分野で使ってくださっているようです。――――本では最初になかなか継続できない日記や資格といったものの失敗例が紹介され、最終的にそれを改善して成功する物語ありますが、そうした成功例には実例があったんですか?
そうですね。本に出てくるケースそっくりではありませんが、似たようなケースの方は結構いらっしゃいます。僕の友人にもいますし、僕自身も英会話の勉強はこの方法を実際にやっていました。――――英会話は本当に続かないと言いますよね。
続かないでしょうね。環境設定をきちっとやっておかないと、英語を勉強してもいつ喋れるようになるかはわからないですから。最終的なゴールが見えないわけです。そうすればどうしても続かなくなってしまうので、環境設定をしてスモールゴールを沢山作って、ちょっとしたらご褒美を与えて、というのを幾つも作ってもらう必要があるんです。――――今回この本を読ませていただいて、実を言うと半分くらいできているんじゃないかと思うこともあったんですが、よく考えると環境設定をしているつもりでも、その環境をきちんとペーパーに落とすとか、形にしてルール化するというのは、意外とやりませんよね。その点を続けてみようかと思いました。
いいと思いますよ。本の中で「行動契約書」というものを紹介していますが、やはりきちんと文字で書いてサインをしたほうが、続ける確率は格段に上がってきます。
「続ける技術」の基になっているのは、行動科学の分野における継続をテーマにした幾つもの論文です。そこから作って実際やった結果、うまくいったケースですから、この通りにやってもらえば10人中6人から8人は続けられるようになっているんです。行動契約書にサインをするというのはすごく重要なステップなので、できればやってもらいたいと思います。――――すごく難しいことが必要というわけではなく、普通の方が普通にチャレンジできるということでしょうか。
そうですね。それが一番重要なことですから。――――私はまず、スポーツクラブに通うことを続けることからやってみようかと思っているのですが。
いいですね。気楽な気持ちで始められますよね。(3)に続く