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宋文洲
ソフトブレーン株式会社マネージメントアドバイザー [ 営業 ]
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宋文洲
[インタビュー]
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やっぱり変だよ日本の営業/日経BP企画(3)
2005.05.01
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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私の考え方が広がれば、日本はまだまだ大きな成長力を 持っている国だと思います
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単に売るだけでなく、全体のプロセスを考慮しよう
【主藤】 そういうふうなご自身の経験をベースにして、会社として効率的なものを追求してきたツールを携われるのであって、そういうことを含めてこの「やっぱり日本の営業変だ」と、本をお書きになったと思います。
これからの主流になる営業というか、これからの日本の営業は、どういうふうな形の営業に変わっていくと思われますか?昔のスタイルと対比させながら、お話して頂ければと思います。
【宋】 昔のスタイルの最大の特徴は、いわゆるマネージメントをしないで、腕で営業マンに売らせるんですね。だから、個人的です。
【主藤】 売れる営業マンに売らせるというのが、一番効率いいのではありませんか?
【宋】 実は、今の商品は複雑なので、一人で売れないのです。
例えばある商品、インターネットでも何でもいいですが、実は営業の前に誰にニーズがあるか、次にどのように契約させるかとか、契約した後はいつ設置すればいいのか、そしてインターネットがつながった後も、パソコンとどうつなぐかとか、結局これらのことをソリューションというんですね。
つまり、お客さんは回線を買うのが目的ではなく、その回線を使ってちょっとおしゃれなサイトをチェックしたいとか、子供の教育について調べたいとか、そこまで全てをやってあげないと営業と言えないわけですよ。
【主藤】 今までは単に物を売ればよかったけれども、今おっしゃったようなソリューション、問題解決という、全体のプロセスを売ることが多くなってきていると。
【宋】 そうです。昔は物のない時代だと、隣の奥さんが冷蔵庫を買ったから、「うちも買いましょう」とか、これは簡単な話です。
しかし、今、そんな家庭はないじゃないですか?結局、我々が「なぜ物を買うか」となると、その物ではなく、その物を通じてやりたいことを最終的に達成させてあげないと、会社は絶対に物が売れません。
【主藤】 営業の対象商品の性質が変わってきたとはいえ、たくさん訪問して大勢の人に会って、気合を入れて売った方が、効率的ではありませんか?
【宋】 盲点があります。沢山の人と会うということは、例えば日本の営業は「飛び込み」とよくいいますね。飛び込むには、大体10軒飛び込んだら8軒は要らない人です。
これは全く付き合う気のない彼女にまで、いろいろ女の子に声をかけているようなもので、無駄で失礼なんです。
だからそれより、もっと別のやり方があるんですね。例えば営業の前に集客という方法があります。つまり、集客というのは売ることではなく、消費者はニーズがあるかどうか、お互いに知る作業です。例えばセミナーや講演会とか、ニーズのある人間に集まってもらうんですよ。これはもはや営業の仕事ではありませんね。
【主藤】 営業の仕事ではないと。
【宋】 はい。これは、企業としての広い意味での営業です。そうやって10人集まると9人はニーズがあるわけですよ。
【主藤】 飛込みで集めたわけではないですから、興味があるのでしょうか?
【宋】 ものすごく効率がいいですね。例えばトヨタも最近、車販売を来店型に切り替えてきたでしょう?
【主藤】 お客さんに来てもらうという来店型。
【宋】 こっちの方が効率はいいです。お客さんも押し付けられる気がしないし、そのやり方の方が実はお互いにハッピーですよ。
部門間の協力によって、お客様の満足度を高めよう
【主藤】 川崎さんも今まで営業の仕事をされてきた経験があると思いますが、そのなかで一番上司から言われた売るための秘訣はありますか?
【川崎】 やはり私は宋会長が指摘されていたように、入社して営業職だったので、お客様に挨拶すること、すごく仲良くなる役割を担いました。
男性チームの中で女性1人だったので、どちらかというと接待の方です。最初は、そういう役割を担った何年間でした。
【主藤】 僕もよく言われたのは、やはり「物を売る前に人に気に入ってもらえ」ということです。このようなことは、これから変わっていかなければなりませんか?
【宋】 人間としての信頼というのは、営業に限らず何でも重要ですね。
対人関係で信頼関係を大事にしたいというのは、私も全然否定していませんし、現に僕も大事にしています。ただし、お客さんが買ったのは人間ではありません。
【主藤】 買ったのは人間ではないと。
【宋】 そうです。お客さんが買ったのは、その商品の価値ですから、これを勘違いして「人間を売れ」となると、もう全く逆ですね。
そうすると、やはり営業マンは頭を使わなくなるし、例えば「お客さんにどういった価値を提供すればいいか」というのも頭を使いません。
基本的にやはり、一営業マンだけに依存しないで組織全体連携しながら、お客様に対してちゃんと提案力をつけて問題解決をする、私はよくこのことをプロセスと言います。
【主藤】 プロセス。
【宋】 ええ。複数の人間が協力しながら、結果的にお客様に満足してもらおうという、このプロセスの管理こそ、本当の営業ですよ。
【主藤】 プロセスを管理するのですか?
【宋】 そうです。つまり複数の人間が仕事をやっても、ちゃんと切れ目なくつながっていて、例えば先ほど言ったように、電話をする人が女の子でした。そして興味を示してくれたら、次に男性の営業マンが訪問します。 その後、技術者が取り付けに来ました。最後、メンテナンスの人もちゃんと相談に応じてくれました。これで、4人来ましたよね。
この4人はきちんとしたプロセスを前後関係がわかったうえで、全部お客様のために働いていたら、その会社は信用されます。
例えば営業マンのテクニックで売りつけたような物ですと、あとの面倒をよくみられませんし、技術者もいい加減に来ますよ。だから、本当の営業というのは、複数の技術者や、いろいろなスキルを持った人間を使って、その最初から最後までのプロセスを全部お客様に満足してもらえるようにやれば、物も自然に売れますよ。
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